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「ルイ・ヴィトン」の親会社、24年上半期は14%減益 中国市場の景気減速が響く

LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の2024年1〜6月期(上半期)決算は、売上高が前年同期比1.3%減(現地通貨ベースでは2%増)の416億7700万ユーロ(約7兆1267億円)、営業利益は同8.1%減の106億2400万ユーロ(約1兆8167億円)、純利益は同14.3%減の72億6700万ユーロ(約1兆2426億円)だった。

部門別の売上高では、主要事業のファッション・レザーグッズ部門が同1.8%減(現地通貨ベースでは1%増)の207億7100万ユーロ(約3兆5518億円)だった。スターブランドの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「ディオール(DIOR)」は引き続き好調で、「セリーヌ(CELINE)」「ロエベ(LOEWE)」「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」などのブランドも売り上げに貢献した。

LVMHはブランド別での売上高は開示していないが、ジャン・ジャック・ギヨニー(Jean-Jacques Guiony)最高財務責任者(CFO)は、アナリスト向けの決算説明会で、米国では「ルイ・ヴィトン」より「ディオール」の、中国では逆に「ディオール」より「ルイ・ヴィトン」の業績がよかったと述べた。同氏はまた、「ルイ・ヴィトン」が7月上旬に2〜3%の値上げをしたという複数の海外メディアによる報道を事実だと認めた。同ブランドが値上げをしたのは、23年2月以来となる。

なお、6月には、LVMHが擁するクリスチャン ディオール クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)のイタリアの子会社で、「ディオール」のバッグなどの生産を行うマニュファクチャラーズ ディオール(MANUFACTURERS DIOR)のサプライヤーである中国系の下請け企業が、イタリアの生産工場で不法滞在の移民などを最低賃金以下で雇用し、「倫理的に認められない衛生状況下」で過負荷状態の機械を稼働させていたことなどが明らかに。当該の工場は人権侵害により1年間、行政の指導下に置かれることとなった。ギヨニーCFOは、本件について同ブランドに全ての責任があるとしながらも、サプライヤーのサブコントラクターなどにおける労働条件について認識していなかったと説明。今後は再発防止策として監査をより頻繁かつ厳密に行い、生産工程の垂直統合を急ぐと述べた。

ティファニー(TIFFANY & CO.)」「ブルガリ(BVLGARI)」「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」などの人気ブランドを抱えるウオッチ&ジュエリー部門は、同5.1%減の51億5000万ユーロ(約8806億円)だった。「ティファニー」の店舗のうちおよそ30店を上半期に改装したことや、“ティファニー T”や“ティファニー ロック”などのアイコニックなコレクションにフォーカスするべくブランドのリポジショニングを行っていることなどが業績に影響したという。

香水&コスメティクス部門は同2.6%増の41億3600万ユーロ(約7072億円)、免税店のDFSや化粧品のセレクトショップ、セフォラ(SEPHORA)などを運営するセレクティブ・リテール部門は同3.3%増の86億3200万ユーロ(約1兆4760億円)だった。主に中国市場における高級酒の需要が減速しているワイン&スピリッツ部門は、同11.7%減の28億700万ユーロ(約4799億円)だった。

「日本での増収には利益面で代償もある」

地域別の売上高では、フランスが同3.4%増の32億8900万ユーロ(約5624億円)、フランスを除く欧州は同1.6%増の66億2800万ユーロ(約1兆1333億円)といずれもほぼ前年同期並みで、米国は同0.6%減の102億5600万ユーロ(約1兆7537億円)と微減だった。円安とインバウンド需要が続く日本は同27.5%増の37億7000万ユーロ(約6672億円)と2桁成長だったが、中国の消費者が日本でラグジュアリーグッズを購入していることから、日本を除くアジア太平洋地域は同12.5%減の123億6700万ユーロ(約2兆1147億円)となった。

ギヨニーCFOは、「日本市場での成長をうれしく思うが、利益や利益率の面で代償もある」と指摘。値上げを実施したものの、日本と他国における価格差や為替レートの影響を相殺しきれていないことや、日本で賃料や人件費が上昇していることによって利益が圧迫されていると説明した。

パリ五輪のスポンサー費用は256億円と情報筋

ベルナール・アルノーLVMH会長兼最高経営責任者は、「24年上半期の業績は、経済上および地政学上の先行き不透明感が続く中、各メゾンがそれに迅速に対応し、それぞれの強みを発揮したことを反映している。また、パリオリンピック・パラリンピックのパートナー企業として、各メゾンのクリエイティビティーやクラフツマンシップ、社会への深いコミットメントを共有することでこの大イベントを成功に導き、世界的な舞台でフランスが輝くことをサポートできて大変光栄に思う。社会情勢を慎重に注視しつつ、下半期も自信を持って事業を進め、ラグジュアリーグッズ分野におけるグローバルリーダーとしてのポジションを強化していく」と語った。

情報筋によれば、パリ五輪のプレミアム・パートナーであるLVMHが負担するスポンサー費用は、1億5000万ユーロ(約256億円)程度ではないかという。

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