コーエンは、エキゾチックレザーを使用したバッグを顧客に提示する際に、“販売儀式”を行うよう訓練されたと主張している。具体的には、黒い手袋をはめ、「皮は倫理的に調達され、ヘビやワニは虐待されておらず、ヘビの皮は自然な脱皮プロセスで得られ、皮は食肉産業の副産物であり、動物の人道的扱いが認証されたサプライヤーとしか取引していない」と顧客に伝えることを含んでいたという。しかし、ケリング傘下のカラベル(CARAVEL)にエキゾチックレザーを供給したとされる、タイにある2つのパイソン農場を調査した動物愛護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)アジア部門の発表により、パイソンの暴力的な殺処分方法を知ったとし、このことを知っていたら、顧客を欺くことも、数年間にわたりパイソンの皮のバッグや靴を個人的に購入することもなかったと主張した。精神的苦痛による損害賠償や、コーエンが購入したエキゾチックレザーを使った「グッチ」製品の補償、顧客に販売された可能性のある製品の補償などを求めている。
グッチの担当者は、「コーエン氏が提起した訴訟について認識している。会社の方針として、係争中の訴訟についてコメントすることや、元従業員または現従業員について公に情報を開示することはしない。法廷でしっかりと反論する予定だ」と述べた。
18年間シカゴ店に勤務していたコーエンは、2006年8月に入社し、23年10月に退社。在職期間中、5000万ドル(約78億5000万円)以上を売り上げ、17年から23年まで6年間連続でシカゴ店のトップ販売員であったと主張している。コーエンは「『グッチ』の製品を販売することを本当に愛していた」、そして「いつかイタリアで働きたいという夢を持っていた」と述べている。
なお、コーエンが両社に対して法的措置を取るのは今年に入って2回目で、1回目は、コーエンが「グッチ」に在籍中、年齢やメンタルヘルスについて差別的な発言を受けたと主張している。