ファッション

「シャネル」ゆかりの地で開催する競技は…… 「WWDJAPAN」的パリオリンピック・パラリンピック競技会場案内

開幕直後からメダルラッシュに沸くパリオリンピック。今大会の見どころは、パリを代表する名所が競技会場に変身すること。そしてそれら会場は、ファッション界にとっても深い縁があるのです。毎年のようにパリのファッション・ウィークで取材を続けてきた村上要「WWDJAPAN」編集長、向千鶴サステナビリティ・ディレクター、藪野淳・欧州通信員がファッション目線で競技会場をご紹介。「シャネル(CHANEL)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」など、パリを代表するブランドの“お気に入り会場”も見えてくるかも!?

「シャネル」ショーや
「エルメス」馬術大会などもここで!
【グラン・パレ】

1900年、パリ万国博覧会のために建てられたパリ8区の歴史的建造物。今回のパリオリンピック開催にあたり、20年から改修を行っていた。「シャネル(CHANEL)」はこのグラン・パレの改修に2500万ユーロ(約31億円)を寄付している。

パリオリンピック実施競技:フェンシング(7/27〜8/5)、テコンドー(8/7〜11)
パリパラリンピック実施競技:パラテコンドー(8/29〜9/1)、車いすフェンシング(9/3〜9/7)


年に1度の華麗なる「エルメス」馬術競技大会
/向千鶴 サステナビリティ・ディレクター

グラン・パレの数あるイベントの中も、「エルメス(HERMES)」がここで年に1度開催している馬術の競技大会「ソー・エルメス(SAUT HERMES)」は圧巻。CSI5レベルの大会で1社の名を冠した大会は「ソー・エルメス」のみ。「エルメス」をまとうアスリートと馬が、「エルメス」使用の障害物を飛ぶ姿が華麗です。馬具職人のデモンストレーションの参加や「エルメス」グッズのお買い物もできちゃうとあり毎年大盛況です。

ヴィルジニーも愛した「シャネル」にとってのお気に入り
/村上要「WWDJAPAN」編集長

「シャネル」の2023-24年秋冬コレクションから。グラン・パレで開かれたカール・ラガーフェルドとのお別れ会の様子

1900年のパリ万国博覧会のために作られた展覧会場兼美術館のグラン・パレでは、サステナビリティ・ディレクターの向が話す通り、毎年さまざまなイベントが開かれています。パリ・コレクションでは、なんといっても「シャネル(CHANEL)」のお気に入りのショー会場。2005年以来、「シャネル」のショー会場といえば、ほとんどがグラン・パレ。時にはグラン・パレにエッフェル塔と建てたり、ビーチを作ったりで私たちを仰天させてくれました(建てるくらいなら、エッフェル塔で開催すればいいのに!というのは、野暮な話です)。先日メゾンを去ったヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)も、ショー会場にはグラン・パレを愛した人物でした。彼女が去った後に開催したオートクチュール・コレクションの会場は、オペラ座。今後の新体制で、「シャネル」がまたグラン・パレに戻ってくれるのか?私は密かに注目しています。

「シャネル」で、この場所で何度もショーを開催したカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)のお別れ会もグラン・パレで開かれました。

グラン・パレ改装時の仮施設
各ブランドも活用
【シャン・ド・マルス・アリーナ】

グラン・パレの仮設施設として21年にシャン・ド・マルス公園内に建設され、これまでにさまざまなイベントが催された。オリンピック・パラリンピック終了後の24年秋に解体される。

パリオリンピック実施競技:柔道(7/27〜8/3)、レスリング(8/5〜11)
パリパラリンピック実施競技:車いすラグビー(8/29〜9/2)、視覚障がい者柔道(9/5〜7)


小松菜奈をフィーチャーした「シャネル」のショーも開催
/藪野淳・欧州通信員

グラン・パレの大規模な改修工事に伴い、2021年にオープンしたシャン・ド・マルス・アリーナは、グラン・パレ・エフェメール(一時的なグラン・パレ)として知られる木造施設。これまで「シャネル」のオートクチュールとプレタポルテのショーやエルメス主催の馬術競技大会「ソー・エルメス」など、もともとグラン・パレで開催されていたイベントが数多く開催されてきました。ちなみに「シャネル」がアンバサダーの小松菜奈さんを大々的にフィーチャーした23-24年秋冬コレクションのショーを開催したのも、この場所です。会場に入ると巨大なスクリーンに小松さんの姿が映し出されていて、ショー中もランウエイの中央に設置された巨大なカメリアのオブジェに小松さんの映像を投影。日本人として、なんとも誇らしい瞬間でした。

「シャネル」のショーは朝一が多いのですが、次の取材まで時間があるときは会場の近くにあるカフェ「コージー ボスケ(Kozy Bosquet)」へ。アボカドトーストやパンケーキなど美味しい朝食やブランチが食べられるので、オススメです。

隣接する陸軍士官学校では「ステラ」がピースフルなショー
/村上要「WWDJAPAN」編集長

「ステラ マッカートニー」の2023-24年秋冬コレクションから

柔道やレスリングの会場となるシャン・ド・マルス・アリーナは、エコール・ミリタリー、陸軍士官学校の向かい側にあります。士官を志す学生には、柔道の愛好家も多いのかもしれません。柔道を愛するフランス人は、日本人よりはるかに多いと聞きますから、盛り上がりそうですね。

「ステラ マッカートニー」の2023-24年秋冬コレクションから

そんな由緒ある場所でショーを開催したのは、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」。2023-24年秋冬のファッションショーには、ムチを使わずに馬を手懐ける人物が登場。人間と動物の理想的な関係性を表現すべく、砂場をギャロップしたり、ゴロンとしたりのお馬さんの間をモデルが歩くという、実にピースフルなランウエイショーを見せてくれました。

ファッション業界でもお馴染みの
広場に特設アリーナを設置
【コンコルド広場】

パリ市内最大の広場、オリンピックのために特設アリーナを設置し、大会中は「コンコルド・アーバンパーク」の名でさまざまなアーバンスポーツを実施する。コンコルド広場は18世紀後半に作られ、フランス革命時はルイ16世やマリー・アントワネットの処刑場としても使われたことで知られる。

パリオリンピック実施競技:スケートボード(7/27〜8/8)、自転車・BNXフリースタイル(7/30・31)、3人制バスケットボール(7/31〜8/6)、ブレイキン(8/9〜8/11)


ストリートキッズも大好き! エディ様、特設テントを構える
/村上要「WWDJAPAN」編集長

市内中心部のチュイルリー公園と隣接するコンコルド広場は、新競技ブレイキンのほか、自転車(BMXフリースタイル)や3人制バスケットボール、スケートボードなど、ストリートなスポーツの競技会場になります。そんな場所でショーを開催したのは、ストリートキッズも大好きな、エディ・スリマン(Hedi Silimane)による「セリーヌ(CELINE)」。コンコルド広場に漆黒の特設テントを構え、2019-20年秋冬メンズ・コレクションを発表しました。

「セリーヌ」の2019-20年秋冬メンズ・コレクションから

特設テントの中に入ると、そこはエッフェル塔が見えるナイスビュー。「サンローラン(SAINT LAURENT)」時代からエディ・スリマンによるファッションショーのフロントローのさらに前、“ゼロ列目”を陣取るイケてるボーイズ&ガールズも健在です。ちなみにエディ様は「セリーヌ」で、ナポレオンが眠るアンヴァリッドでもファッションショーを開催したことがあります。この場所では今回、アーチェリーが開かれるほか、マラソンのゴールになる予定です。

著名なスポーツ大会からコンサートまで
多目的に利用されている屋内競技場
【ベルシー・アリーナ】

パリ12区にあるフランス最大の屋内競技場。1984年に作られており、今回の競技会場の中では比較的新しい部類に入る。世界的なスポーツ大会やコンサートなど幅広く利用されている。

パリオリンピック実施競技:バスケットボール(7/27〜8/11)、体操(7/27〜8/5)、トランポリン(8/2・3)
パリパラリンピック実施競技:車いすバスケットボール(9/7・8)


「アミ パリス」は丘を築いて幻想的なランウエイ
/村上要「WWDJAPAN」編集長

バスケットボールや体操、トランポリンの競技会場になるベルシー・アリーナは、コロナ前まではメジャーなショー会場でした。私が記憶している限りでは、「リック・オウエンス(RICK OWENS)」は比較的常連、「アミ パリス(AMI PARIS)」も何度か、かつては「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」さえ、このベルシー・アリーナでショーを開いています。オリンピック・パラリンピックの競技会場にもなるくらいだから、広くて、意図するショー会場や演出が作りやすいのでしょう。一方ここ数年、ブランドはさらに個性的な会場を求めてベルシー・アリーナを離れたり、自然光の中で開放的なショーを開きたいと考えアリーナのような密閉空間を避けたりの傾向があり、私はここ数年、ベルシー・アリーナを訪れていません。ベルシー・アリーナは、メトロの駅や車道から入口が若干遠いデメリットを抱えています。セレブや、ヒールを履いた女性ゲストには、警備や移動の観点において少し面倒という理由もあるのでしょう。

「アミ パリス」の2019年春夏コレクションから

写真と動画は、「アミ パリス」の2019年春夏コレクションです。小麦が実る頃の、フランスの田園風景を想像しました。稲穂が生い茂る小高い丘から現れるモデルたちの、なんと幻想的なこと。こんな丘を設けられるほど、ベルシー・アリーナは広大なんです。

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