ファーストリテイリングは5月25日、都内でメディア懇親会を開催した。「ユニクロ」が出店する17カ国・地域と、新たに今秋進出するカナダを含めた、計18カ国、118社、約150人のメディア関係者が出席。柳井正・会長兼社長は冒頭、英語で「この機会に『ライフウエア(Life Wear)』という概念を紹介したい。洋服の将来を長らく考え、究極の日常着としてのライフウエアという概念に落ちついた。おそらくアスレジャーといったことだが、よりライフウエアのコンセプトの方が包括的で広いものだと考えている」とスピーチ。また、普段は株価ついてコメントしない柳井会長だが、「今日は株価が一時、1000円以上高値を付けた。皆さんが来てくれているからだ。ありがとう」と締め、笑いを誘った。
続いて、2014年10月に起用した、ジョン・C・ジェイ=プレジデント・オブ・グローバル・クリエイティブとのトークも実施。アパレル業界の将来について、柳井会長は「アパレル産業もファッション産業もリテールも、全部統合されるんじゃないか。究極的には、工場から一人ずつセミオーダーした商品が、お客さまの元に届けられるようになる。それはすごく考え抜かれた商品なんじゃないかなと思う。今は供給過剰なので、最高の商品しか生き残れない。われわれはそういった商品を作っていきたい」とコメント。「幸いなことに、アパレルは成長産業だ」として、世界の人口の半分以上を占めるアジア諸国の人々が、ファッションや生活に目覚め、大きな消費市場になることが、アパレルにとってもファーストリテイリングにとっても大きなポテンシャルであることを示唆した。
また、グローバル化時代には、「出した情報が世界中のフェイスブックやツイッター、日本ならライン、中国だったらウィーチャットなどのSNSで、世界中に一瞬で伝わるし、それが口コミになる。そういう時代であり、世界中のジャーナリズムの中心の人々に取材を受けるのは本当に嬉しいことだ」とメディア戦略の重要性を説いた。さらに、商品の強化策については、「商品自体は本当は情報なんじゃないかと思う」と独特の考え方を披露。「商品は情報から作られるもの。情報の量と質が高ければ、そして、それを商品化するデザイナー、パタンナー、MD、製造工場の人々の質が高ければいい商品ができると思う。一朝一夕ではいかないが、デジタルとテクノロジーにより世界中でつながっている。(今日も呼び掛けたら)118社もの海外メディアが来てくれる世の中になった。インターネットを通じたら、世界最高の商品を作ろうという人たちが集まってくれると思う。才能を持っていても、うずもれている人もいるだろうし、本当にいいと思われる服を作って売りたい人もいると思う。われわれはインフラを持っている。生産も製造も(店頭)販売も(ECでの)ダイレクト販売もしている。そういう人たちと世界最高の商品を作っていきたい」と話した。
これに対して、ジョン・ジェイ氏は「ミスター柳井にビジョンがあるから、私はここにいる。」「ワイデン&ケネディ時代、1998年に『ユニクロ』のフリースキャンペーンを手掛けたが、『ユニクロ』は日本で第1号のクライアントでありがたい存在だった。15年後にまた一緒に仕事をすることになったが、私が参画してからのこの1年でドラマチックに変わった。毎週対話し、私たちの目標は大きくなっているし、旗艦店の考え方やテクノロジーの考え方も進化している。商品の幅も広くなっている。テクノロジーと共に、スピードが速くなっている」と状況を説明。「アパレル産業は混沌として過渡期にある。価値感が変わる中で、『ユニクロ』と世界やいろいろな文化や社会とつながる促進役として仕事をしていく」と自身の役割にも言及した。
質疑応答で、香港のメディアから「投資家の中には最高成長の期間は終わったという人もいるが、今後の成長エンジンは何か?」という質問を受けた柳井会長は、「今から成長しますよ。今までの成長は成長じゃない。われわれは失敗すると勉強し、成長する。今は新しい産業を創り始めたばかりだ」と返答。鍵を握るプロジェクトとして、東京・有明に今秋から来春ぐらいに本格的に始動する「有明プロジェクト」と、今春開業した「ロンドンのオックスフォードストリート311旗艦店」を挙げた。