毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年7月29日号からの抜粋です)
大塚:着ていて楽なテーラリングや海にちなんだテーマは春夏の定番ですが、年々、世界的に夏は暑くなっています。そこに対応する流れが、2025年春夏メンズのトレンドにも直結していました。
藪野:夏といえばヨーロッパではバカンスですが、特にイタリアには海が身近なデザイナーが多いです。例えば、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)はシチリア、「グッチ(GUCCI)」のサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)はナポリ、「MSGM」のマッシモ・ジョルジェッティ(Massino Giorgetti)はリミニ出身。そんな彼らが提案する開放的なスタイルは説得力がありました。
大塚:春夏では春のスタイルがメインとなることが多かったですが、海外のバイヤーの「ここ数シーズンで一番夏らしい」というコメントが印象的でした。
藪野:まさに。山本耀司さんやジョニオ(高橋盾)さんなど酷暑を体感している日本人デザイナーは、その中で快適さとファッションを両立するために軽やかさを追求しました。テーラリングさえ、驚くほど薄く軽かった。素材から構造までエフォートレスでありながら洗練されているものが多く、好印象でした。それだけでなく、開襟シャツや上品な透け感のトップスなど、暑さの中でもオシャレを楽しめそうな提案が充実していて、ビジネス的にも期待できそう。同時にトレンドを分析していると、メンズとウィメンズの境界線がどんどんなくなっていると感じます。
大塚:そうですね。ウィメンズで流行したものが、数年後にメンズの売り場に到着しています。僕自身も2年前はシアー素材の着用に抵抗があったのに今や自然に着ています。「グッチ」のマイクロミニのパンツはさすがに難易度が高いですが、レースやビジュー使いなど、ウィメンズとの垣根がなくなっています。
イージーレザーシューズに注目
藪野:大塚さんは何か注目したアイテムはありましたか?
大塚:イージーレザーシューズですね。一見しっかりしたレザーのローファーが、かかとをつぶしても履けるようになっていたり、バレエシューズ的なものが出ていたりと、サンダルが苦手な自分としては、いいなと思いました。
藪野:リラックスした単なるリゾートスタイルにならないように、都会での着こなしには引き締める要素が必要。着用している本人は楽だけど、かっちり感を演出できるデザインというのは、今季らしいポイントですね。