先日、イーロン・マスク(Elon Musk)が「AIファッションショーのための最高の時期(High time for an AI fashion show)」というテキストと共にX(旧Twitter)に投稿した映像が話題を集めている。
その映像は、YouTubeチャンネル「インターディメンショナルTV(Interdimensional TV)」が画像生成AIのミッドジャーニー(Midjourney)やAIスタートアップ企業ルマ ラボ(Luma Labs)のプラットフォームを用いて制作したもので、世界的な政治家や指導者、実業家たちがモデルとしてファッションショーのランウェイを闊歩している。
約80秒の映像でオープニングを飾るのは、2021年にディープフェイクなどのAI処理技術を風刺するコレクションを披露した「バレンシアガ(BALENCIAGA)」風のパファーコートを着用するキリスト教カトリック教会のローマ教皇フランシスコだ。続いて、反LGBTQ派として知られるロシアのウラジミール・プーチン(Vladimir Putin)大統領が「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」風のモノグラムがプリントされたレインボーカラーのドレスをまとい登場。その後も、健康問題を抱えるジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は車椅子で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前米大統領は囚人服のような格好で、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)元国務長官は「シュプリーム(SUPREME)」風のセットアップで、ティム・クック(Tim Cook)アップル(Apple)CEOはiPadをボディーバッグのように首から下げて、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)メタ(Meta)共同創業者兼会長兼CEOはトカゲスーツ姿で(注:人間を装った巨大なトカゲという都市伝説から)、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)アマゾン(Amazon)創業者兼取締役会長はドル紙幣を模したセットアップで現れ、イーロン本人もテスラ(TESLA)仕様のブラックの宇宙服姿で映し出されている。
本件について、アメリカのリン大学マーケティング学科の教授アンドリュー・バーンスタイン(Andrew Burnstine)は「政治、技術、有名人、文化の超現実的な交差点であり、風刺や技術、文化批評を混合したショー。彼らのペルソナと世間の認識についての大胆な視覚的声明であり、AIと先進技術のレンズを通してファッションに対する新たな知見を得た」と評した。
また、AIを用いたクリエイティブサービスを提供するザ コピー ラボ(The Copy Lab)のカール・アクセル・ワルストローム(Carl-Axel Wahlstrom)クリエイティブ・ディレクターも「AIを遊び心と創造性に活用できた一例。権力を持つ人々が、自分が何者か、あるいは何者になりたいかを明確に表現する服装を着用する機会を得ることになる」とコメント。続けて、「有名人やインフルエンサーと同様に、政治家もファッションを利用して、さまざまな層へ言葉を使わずメッセージを伝えるようになるだろう」と述べた。
なお米「WWD」は、イーロンの実母であり50年以上のモデル歴を持つメイ・マスク(Maye Musk)をはじめ、「ルイ・ヴィトン」や「シュプリーム」などのブランドにコメントを求めたが、返答は得られなかったという。