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2025年春夏パリ・メンズ・コレクション 海外バイヤー評 今季のパリも「エレガンス」を気負わずに

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ボタンを閉めずに着るテーラードジャケット、流動的な素材、遊び心のあるショートパンツなど、「さりげなさ」や「控えめなエレガンス」などの要素が際立ち、昨季のトレンド「クワイエット・ラグジュアリー」から、よりルーズでリラックスしたスタイルに進化した今回のパリ・メンズ・コレクション。

ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)による最後のコレクションや、映画のような「リック・オウエンス(RICK OWENS)」のショーがパリを彩った1週間を、各有力小売店のバイヤーはどう見たのか。以下に各人が気になったトレンドやコレクション、期待する若手ブランドを紹介する。(米国版記者 ローンダ・リッチフォード、編集部記者 佐藤慎一郎・訳)(この記事は「WWDJAPAN」2024年7月29日号からの抜粋です)

サックス・フィフス・アヴェニュー

レジナルド・クリスチャン=メンズウエア・シニア・ファッション・マネージャー

 全体として、優れたデザインやテクスチャー、熱のこもったアイテムが目立ち、力強さを感じた。それは、エモーショナルで刺激的なショーを披露した「リック・オウエンス」もしかり。ドリス・ヴァン・ノッテンによる最後のショーは、カクテルタイムを含めて、まるでファッション業界の同窓会のようで、会場にいた誰もがドリスのクリエイションへの称賛と感謝を分かち合った。「アミリ(AMIRI)」のコレクションはオールド・ハリウッドに言及し、アメリカン・ラグジュアリーを改めて定義した。

期待の若手ブランド

 
オーラリー(AURALEE)」の今後に期待。ミニマルな中に新鮮さを感じさせる同ブランドは、今後私たちの顧客の「マスト・アイテム」になっていくはず。

ノードストローム

ジャン・デレオン=メンズ・ファッションディレクター

 「リック・オウエンス」や「サカイ(SACAI)」のような巨匠デザイナーによるショー、ドリス・ヴァン・ノッテンとのほろ苦い別れ、そしてランウエイを即席のカラオケ・ナイトに変えた「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」まで、素晴らしいショーが目白押しだった。天候に恵まれたこともあり、洗練されたレザージャケットも多く見られた。

期待の若手ブランド

 
クラシックなメンズウエアをモダンに解釈し、瞬く間に人気ブランドとなった日本のレーベル「アプレッセ(A.PRESSE)」、芸者からインスパイアされ、より軽い生地でドレープを楽しめる“折り紙ジャケット”が人気の「セッチュウ(SETCHU)」には注目している。

マイテレサ

ソフィー・ジョーダン=メンズウエア・バイイング・ディレクター

 ドリス・ヴァン・ノッテンの最後のショーは美しく、感動的な瞬間だった。コレクションのハイライトは花柄のディッププリントで、全て手作業のため一つ一つがユニークで、コレクターズアイテムになることは必至。今シーズンはほとんど全てのコレクションでショートパンツを目にしたほか、大胆なメタリック素材やアクセサリーもよく目についた新アイテム。

マストアイテム

 
ザ・ロウ(THE ROW)」の“ローナンジャケット”は、今季究極の1着。柔らかいダークブラウンのスエード製で、一生モノだ。売れ行き好調の「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」のだまし絵ジーンズも2025年春のバージョンはより大胆にアップデートされている。

ニーマン・マーカス

ブルース・パスク=シニア・エディトリアル・ディレクター

 今シーズンの多くのショーには「さりげなさ」や「控えめなエレガンス」の要素が見受けられた。ダブルブレストのジャケットは、「アミリ」「アミ パリス(AMI PARIS)」そして「ルメール(LEMAIRE)」のルックが象徴したように、ボタンをはずしたイージーな着こなしがリラックス・スタイルの鍵に。また、「ドリス ヴァン ノッテン」「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE)」など多くのショーで、優雅で流れるような動きのあるスタイルや、幾重にも重ねられた透け感のあるアイテムが目立った。

マストアイテム

 
ドリス・ヴァン・ノッテンがデザインした最後のコレクション。ボタンを外してエレガントに着こなすダブルブレストのジャケット、ワイドなショートパンツなど。

ル・ボン・マルシェ

フランク・ナウレス=メンズ・ファッション・ディレクター

 今シーズンも「クワイエット・ラグジュアリー」のトレンドが優勢だが、日常着にふさわしい、よりリラックスしたひねりが加えられている。目にとまったアイテムとしては、モダンで洗練された雰囲気を演出してくれるピケ・ニットのポロシャツとワッフル生地の半袖シャツ。パンツは、かなりゆったりとしたフィットに、エレガントにはける十分な丈が特徴。イエロー、アクアグリーン、バイオレットなどのパステルカラーも目立った。

期待の若手ブランド

 
カナダ発の「エコール・ド・パンセ(ECOLE DE PENSEE)」は、クラシックなアイテムを洗練された形で再解釈し、美しいカッティングと厳選された素材が魅力で、今後が楽しみだ。

セルフリッジ

ボッセ・マイアー=ウィメンズウエア&メンズウエア・ディレクター

 多くのショーで、テーラードジャケットとパンツの組み合わせに限らず、ショートパンツにシャツ、バルーンパンツにスポーツジャケットなど、さまざまな種類のセットアップが目立った。色調としては、ベージュ、黒、そしてニュートラルな色味が多く見られ、ファレルによる「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のオールブラックのコレクションも印象的だった。また今シーズンは、エキサイティングで新しい独立系ブランドが数多くパリに集結した。

期待の若手ブランド

 
マレ地区のショールームでコレクションを披露した「コール・バクストン(COLE BUXTON)」。エイサップ・ロッキーと「アウグ(AWGE)」による「アメリカン サボタージュ(AMERICAN SABOTAGE)」のショーでは、欲しくなるようなアイテムが多く、魅力的だった。

ホルトレンフルー

ジョセフ・タン=ファッションディレクター

 「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」「サカイ」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「ディオール(DIOR)」のショーに特に感銘を受けた。軽さを感じさせるレイヤリングと、流動的でリラックスしたフォームが、春夏シーズンのノンシャランな雰囲気を演出している。パステルカラーと、セージグリーン、ネイビー、ポップなチェリーレッドの組み合わせも目についた。「アミリ」「ディオール」「ルイ・ヴィトン」が示した新たなドレススタイルに、静ひつなミニマリズムと陽気なエレガンスの進化を見た。クリスタルの刺しゅうが施されたディナージャケットやクチュール仕立てのテーラリングが目を引いた。

マストアイテム

 
今季のパリで、あらためて輝きを放った「サカイ」と「ナイキ(NIKE)」のコラボスニーカーや、「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」と「アディダス」のスニーカー、「ルイ・ヴィトン」の“スピーディーバッグ”、「ディオール」のレザーサンダルなどの定番人気アイテム。多くのブランドが発表したアウターの中でも「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」「ドリス ヴァン ノッテン」「リック・オウエンス」が披露した春らしい軽やかなダスターコートが魅力的だった。

ギャラリー・ラファイエット

アリス・フェイヤール=メンズウエア・オフィス兼バイイング・ディレクター

 「リック・オウエンス」のショーは、創造性がファッションの本質であることを証明する素晴らしい出来だった。トレンドとしては、上品でラグジュアリーな素材と装飾で、洗練されたカジュアルスタイルを表現するブランドが目を引いた。ワイドパンツやテーラードプリーツのバミューダショーツなど、柔らかく、流れるようなテーラリングは健在。黒や茶に、ライトカーキ、サンドベージュ、ライトイエローやパステルピンクなどの淡い色をミックスするコレクションが多かった。あらゆる面において、パリは最強のファッション・ウイークであることに変わりはない。ただ、今回は全体的にやや保守的な印象が強く、必需品や定番アイテムに重きを置いたコレクションが目立った。

期待の若手ブランド

 
新鮮でクールなエネルギーを放った「3.パラディス(3.PARADIS)」や、カジュアルで洗練されたデザインの「メタ カンパニラ コレクティブ(META CAMPANIA COLLECTIVE)」、柔らかなシルエットと美しい色味で魅了した「オーラリー」など。

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