ファッション

ショー復活の「ヴィクトリアズ・シークレット」 プロデューサーが語るランウエイ計画

2018年以来、6年ぶりのファッションショー復活を発表した「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA’S SECRET)」。ショーのプロデューサーを務めるジャニー・シャファー(Janie Schaffer)=チーフ・デザイン&クリエイティブ・オフィサーとサラ・シルヴェスター(Sarah Sylvester)=マーケティング担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントに、ショーの計画について聞いた。

08年に「ヴィクトリアズ・シークレット」に入社し、12年に退社、そして20年に復帰したシャファーは「誰もが見たことがないような、より大きく、より良いショーになるだろう。昔の『ヴィクトリアズ・シークレット』のフィルターではなく、現在の『ヴィクトリアズ・シークレット』のレンズを通して、私達のショーがいかに素晴らしいものであったかを讃える意味が込められている」と語る。

2018年に開催した最後の“ヴィクトリアズ・シークレット・ファッションショー”

18年に行われた最後のショーでは、「ヴィクトリアズ・シークレット」のスーパーモデル、通称エンジェル達が登場し、ショーン・メンデス(Shawn Mendes)、リタ・オラ(Rita Ora)、ザ・チェインスモーカーズ(The Chainsmokers)、ビービー・レクサ(Bebe Rexha)、ホールジー(Halsey)、リーラ・ジェイムス(Leela James)、ケルシー・バレリーニ(Kelsea Ballerini)、ザ・ストラッツ(The Struts)が音楽パフォーマンスを披露した。ニューヨークのピア94で収録され、後にABCで放映された。

当時、Lブランズの傘下だった「ヴィクトリアズ・シークレット」は、20年の「ニューヨーク・タイムズ」で女性差別やいじめ、ハラスメントの文化があることを暴露された。毎年恒例のテレビ特番は中止され、ファッションショーのチーフ・マーケティング・オフィサーを長年務めてきたエド・ラゼック(Ed Razek)は、プラスサイズやトランスジェンダーモデルの採用を拒否したことで反発を受け、退社した。この年、リアーナ(Rihanna)の「サヴェージ×フェンティ(SAVAGE X FENTY)」が多様性にあふれたモデルを起用し、インクルーシブなブランドとして立ち上げられている。

2021年にLブランズから独立

21年、ヴィクトリアズ・シークレットは上場企業として独立。23年には アマゾンプライム(Amazon Prime)で「ヴィクトリアズ・シークレット・ワールド・ツアー」でスクリーンにカムバックを果たした。このドキュメンタリーは、ブランドのランウエイモデルのためにカスタム・ルックを考案する20人のグローバル・クリエイティブ・グループ”VS20”にスポットを当てている。

ヴィクトリアズ・シークレットは2024年2〜4月期において、前年同期比3.4%減の13.6億ドル(約2080億円)の売り上げを計上し、400万ドル(約5億4000万円)の純損失を計上した。

“インクルージョン”を目指して

現在、ヴィクトリアズ・シークレットはランウエイからビジネス全体まで、全ての活動においてDEI(Diversity=多様性、Equity=公平性、Inclusion=包摂性)を考慮している。シルヴェスターは「これこそ、ここ数年の私達の変革における最も重要な部分である。ショーを見たり、初めてブラジャーのフィッティングを受けたり、SNSでフォローしたりと、すべての女性が参加できるブランドになりたい。ファッションショーはその究極の姿になるはずだ」と語る。続けて「あらゆるタイプの女性がランウエイに登場する。それがとても重要なことだ。ブランドをより身近でインクルーシブなものにするため、ランウエイで見たものをオンライン購入できることも1つのポイントだ」とシャファー。視聴者はランウエイで披露される“ホリデー・インティメート・アパレル・コレクション“を含むラインアップをすぐに購入することができる。

テレビ放映とエンジェルの“ウイング”について

今回のショーをテレビ放映するのか、もしくはオンラインでライブストリーミングするのかについては、2人は明言していない。「より新しく、より現代的な方法で、どのようにショーを披露することができるのか興味がある。そして、顧客がどこで時間を過ごし、それが何を意味するのかにも興味がある。かつてのようなテレビであるかもしれないし、そうでないかもしれない。あらゆる選択肢を検討している」とシルヴェスター。

これまでのところ、次のファッションショーには元エンジェルのテイラー・ヒル(Taylor Hill)に加え、ナイジェリア人モデルのマヨワ・ニコラス(Mayowa Nicholas)が初登場することがわかっている。ヒルは秋のキャンペーンビジュアルにも登場する。

シャファーはショー復活をインスタグラムでアナウンスした時のことを「とんでもない出来事だった」と振り返る。「信じられないような反響だった。インスタグラムからTikTokまで、すべての記録を塗り替えたと思う。ショー復活を切望する人達から98%の肯定的なコメントが寄せられ、100億回以上のインプレッションを獲得した」。

さらに「私達は強さから脆さまで、女性の全てを象徴する“ウイング”を愛している。このショーは美しい“ウイング”で溢れかえることだろう」と語る。参加モデルの正確な人数については明言しなかったが、その人数はこれまでのショーを上回ると言う。「私達はビッグなホリデーコレクションを持っている。表現したい分野もたくさんある。歌って踊っての大騒ぎになるだろう。たくさんのエンターテインメントやモデル、ウイング、そして魅力に溢れている。とても美しいものになるだろう」と続けた。

ランウエイに期待される”サプライズ”

今回、スタイリストやアートディレクター、アーティストと協力し、ランジェリーや洋服で“サプライズ”を顧客に提供し、「それはとてもスペシャルなファッションショーになるだろう」するとシャファーは言う。そしてシルヴェスターは、ランウエイで披露する新しいスポーツコレクションについて、「“予想外の楽しい方法で ”フィーチャーする予定だ」と付け加えた。

「『ヴィクトリアズ・シークレット』は過去にスポーツコレクションで成功を収めたが、当時の手法からは撤退した」とシャファーは言う。テクニカルな素材をハイファッションのフィルターを通して表現すると言うのだ。「ショーは『ヴィクトリアズ・シークレット』の“スポーツ”に対する視点を示すことができる、パーフェクトな方法だ」。

アイテムはランニング用のリフレクティブ・アウターウエアからテクニカル素材のレギンスまで豊富にラインアップする。昨年にはスポーツブラ“フェザーウェイトマックスブラ”“フェザーウェイトフロントクローズブラ”を追加したばかりだ。「『ヴィクトリアズ・シークレット』のスポーツブラはずば抜けている。私達の“フェザーウエイトマックス”は、世界をリードするスポーツブラだ。軽くて丈夫で、1日中着用してトレーニングすることができる」。

新たなランウエイを確立する
女性ならではの視線

シルヴェスターとシャファーは長い間ブランドに関わっているが、共にファッションショーをプロデュースしたことはないと言う。「私達は“こうでなければならない”“ああでなければならない”という先入観を持っていない。そのため、プロデュース業はとても楽しい」とシルヴェスター。ブランドがこれまで制限されていたことを、枠にとらわれずに考えることができるようになったと彼女は言う。

さらに「女性の視点も取り入れている」とシャファー。「サラと私がこのショーに携わってきたこと、そしてショーに関わるすべての人、商品をデザインしている人ーー今日、私達のビジネスに関わっている全ての人が女性である。これが私達のビジネスの根本的な変化だ。女性の目を通してビジネスを見ることで、これまでとは全く違うものになると感じている」。

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