シャネル(CHANEL)はこのほど、フレグランス&ビューティ部門のアンヌ・キルビー(Anne Kirby)社長が年末に退職することを発表した。後任は追って発表される。キルビー社長は、フランスのランジェリーとスイムウエアのブランド「エレス(ERES)」やコスメブランド「ブルジョワ(BOURJOIS)」の社長を経て、2018年9月にシャネルに入社。ラグジュアリー業界に35年間身を置いている。
シャネルは声明の中で、「キルビーのリーダーシップの下、フレグランス&ビューティは好調な業績を達成し、特に商品開発と世界各地での流通を通じてクリエーションとイノベーションの文化を強化した」と述べる。「これらの活動は全て、『シャネル』のブランド・エクイティを強化し、新規顧客と既存顧客の両方にさらなる魅力を訴求した。キルビーは近年、『シャネル』のフレグランス市場における権威の確立にも貢献している。メイクアップでは、革新的な『コメット コレクティヴ(COMETES COLLECTIVE)』を始動し、異なる視点を融合させることで斬新なコンセプトを生み出す創造の可能性をけん引した」と続ける。
「コメット コレクティヴ」は、22年10月に発表した若手メイクアップアーティストの集団。まずは3人でスタートし、シャネル メークアップ クリエイティブ ストゥディオのクリエイティブな勢いを加速させ、コラボレーションによって美の多元的なビジョンを描くことを任務としている。
シャネルは、「キルビーの強力なイノベーション戦略と専門家による研究の相乗効果で、スキンケアカテゴリーが世界中で著しい成長を遂げた。キルビーは大規模なビジネス変革を先導し、サステナビリティの目標や人材育成、イノベーションへのコミットメントに貢献してきた」と述べる。
同社で長いキャリアを積んだベテラン幹部が退社するというニュースは、6月にメゾンを去ったヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)=元アーティスティック・ディレクターに続くものだ。また、ファブリス・ラウール(Fabrice Raoul)はシャネルSAS(CHANEL SAS)のマネジング・ディレクターに任命され、ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネルSAS社長兼ファッション部門社長の直属となった。ラウール=シャネルSASマネジング・ディレクターは、16年以上務めたリュック・ドニー(Luc Dony)の後任として、ヨーロッパとフランス事業の最高財務責任者(CFO)にも着任した。同氏は16年4月から、「シャネル」のフレグランス&ビューティ部門のグローバルCFOを務めていた。それ以前は、同部門の財務企画・分析ディレクターを務めていた。
リーナ・ネアー(Leena Nair)=シャネル グローバル最高経営責任者(CEO)は5月、23年の売上高が過去最高の197億ドル(約3兆141億円)だったと発表した後、06年以来シャネル・インク(CHANEL INC)の社長兼最高執行責任者(COO)を務めていたジョン・ギャランティック(John Galantic)をはじめ、日本やAPAC、英国、カナダ、ラテンアメリカの各地域のリーダーなど、昨年相次いだ幹部の退任について言及した。ネアー=グローバルCEOによると、21年に同氏が着任したことで動き出した長期的な後継者育成計画の一環だという。「リーダーシップの交代や引退は、ビジネスの自然なサイクルの一部だ。シャネルは、長いキャリアを築いた熟練のリーダーがいることは、とても光栄で幸運なことだと考えている」と話す。「それぞれが多大な貢献をし、新しい世代の才能を育てている。全ての変化は、シャネルでは何事でもそうであるように、準備され、計画され、思慮深く行われたものだ」と強調した。