ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は8月1日、「東京大学×アジア女子大学(以下、AUW) 教育交流プログラム」のセッションに登壇した。両大学の学生や矢口祐人 東京大学副学長らを前に、「自分の国以外で学ぶことは新しい発見の連続。そのように好奇心を持って一生学び続けること。夢は計画と準備によって実現できる。しかし、計画と準備をしただけではダメで、その上で即断・即決・即実行していくこと」などと話した。
ファーストリテイリンググループは2013年から、バングラデシュ・チッタゴンにあるAUWの学生のべ500人に奨学金を給付してきた。キャンパス新設に対して5億円の寄付も行っている。「われわれの生産地はアジアに多いが、現地は教育機会が行き届いていないことが多い。さまざまな国に進出してビジネスをしているが、その国で感謝されるような企業にならなければいけない。学びたいと思っている人の一助になれれば」と柳井会長。
08年に開学したAUWは、バングラデシュのほか、アフガニスタンやシリアなどの紛争国や難民出身の女子学生などを受け入れ、卒業生の約3割が欧米の有力大学院に進学している。ほか、政府系や国際機関やグローバル企業などにも就職していくという。AUWのそうした実績や多様性に東京大学も注目し、AUWとの教育交流プログラムを22年から実施し、ファーストリテイリンググループが支援している。両大学は昨年交換協定も結び、25年から交換留学も開始。東京大学にとって、南アジアの大学、女子大との交換協定の締結は初という。「東大ではこれまで学ぶことに苦労してきたという学生は少ないが、一方でAUWの学生は真逆の環境から来ている。一緒に学ぶことでお互いが変わる。若いうちから友達として異なる文化や環境で育った相手と関係を築いていくことが大切だと思っている」と、東京大学の矢口副学長。
今夏の教育交流プログラムは7月29〜8月8日に、東京大学で実施。ジェンダー平等や貧困、災害、紛争などについて議論を進めている。東大とAUWの学生各12人が参加し、加えてファーストリテイリング財団が支援する日本の大学で学ぶベトナム人留学生4人、柳井正財団の奨学生7人の計35人が参加している。
AUW支援財団理事メンバーでもあるキャシー松井ファーストリテイリング社外取締役も、セッションに来場。「アジアは成長性が大きく、日本の未来はアジアにある。アジアと日本の架け橋となる取り組みに投資することは、企業にとっても慈善事業ではない。女性への投資は家族や周囲にも波及し、非常にリターンが大きい。ファーストリテイリングだけでなく、他の企業もこうした取り組みに是非目を向けてほしい」などと語った。
夏休みに合わせ、ファーストリテイリングは世界19の国・地域から学生らが集まる6日間のインターンシッププログラム“グローバルマネジメントプログラム”も実施している。今年で6回目の開催で、5000以上の応募から選考された45人が参加している。