ファッション

“普通”の男が作る“普通”の服 元「N.ハリウッド」パタンナーが“普通”の新ブランド

N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」でパタンナーを約10年間務めた渡辺光は、ユニセックスブランド「サイズ(XS.S.M.L)」を2025年春夏シーズンに立ち上げた。サイズ表記が並んだブランド名には、「自分の心地いいサイズでまとってほしい」というメッセージを込めた。ブランドコンセプトは“普通を超える普通”で、ベーシックなウエアのフレームを保ちながら、シェイプや素材感をツイストさせて“普通”の個性を最大限に主張する。

アイテムはミリタリーパーカやデニムジャケット、カーゴパンツなど、カジュアルの定番アイテムがほとんどだ。そこに極薄で軽量のナイロンやリップストップ生地を使ったり、生地を巻き縫いでパッカリングしたりし、ギャザーやシワで表面に独特な表情を加えている。さらに、前振りパターンで丸みのある袖や、肩から袖口にかけての滑らかなライン、ワイドフィットで美しい立体感を意識した構造など、パタンナー経験を生かした、プロポーションで見せる服にこだわる。カラーリングは土や石、葉などに着想したアースカラーで、高温高圧染色機で製品染めしている。ファーストシーズンは8型で、価格帯はブルゾン5万2000~6万6000円、シャツ3万3000~3万6000円、パンツ3万5000~4万4000円、ショーツ2万8000円、Tシャツ9000円。

普通も個性、芽生えた自信

渡辺デザイナーは、ブランド立ち上げという野心をもともと抱いていたわけではない。学生時代からパターンを学び、就職した「N.ハリウッド」でもパタンナーとして企画チームを支え続けた。「自分は昔から普通のタイプだった。個性的なメンバーと仕事をする中で、さらにそう自覚するようになった。ブランドをやりたいと考えたことはなかったけれど、10年間続けていくうちに普通であり続けることに自信が持てるようになり、普通をテーマにしたブランドをやってみたくなった」。

渡辺デザイナーは、プロダクトデザイナーのジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)と深澤直人が提唱するデザイン哲学“スーパーノーマル”をヒントに、自身の強みを生かす構想を徐々に形にしていった。ファーストシーズンで多用したアースカラーも、趣味である登山で見た“普通”の景色からインスピレーションを得た色使いだ。「土の茶色や石の灰色、葉の緑色は、地球の長い歴史の中で残ってきたものの色。穏やかで普通に見える光景のようで、実は歴史があり、普通を超えた普通の色だと気が付いた」。

デビューシーズンは化繊を用いた生地が中心だったが、今後はコットンやほかの素材も使い、型数も徐々に増やしていきたいという。「サイズ」が作る普通の服は、決して無難な服ではない。デザイナーが信じる“普通”には、大小あらゆる個性を受け入れる器の大きさがあり、わずかなニュアンスがクリエイションを大きく前進させる可能性を秘めている。

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