ケリング(KERING)の2024年1~6月期(上半期)決算は、売上高が前年同期比11.0%減の90億1800万ユーロ(約1兆4248億円)、営業利益は同42.2%減の15億8200万ユーロ(約2499億円)、純利益は同49.1%減の9億4000万ユーロ(約1485億円)と大幅な減収減益だった。
地域別の売上高では、アジア地域からの観光客が減少した西欧は同6.7%減の25億5500万ユーロ(約4036億円)、国内需要が低下している北米は同9.2%減の20億5700万ユーロ(約3250億円)だった。日本を除くアジア太平洋地域は、ケリングの売り上げの32%を占める最大の市場だが、中国の景気停滞および中国人の顧客が日本で買い物をしていることを受け、同21.9%減の28億9700万ユーロ(約4577億円)と2ケタ減。引き続き円安の恩恵を受けた日本は、同7.9%増(既存店および現地通貨ベースでは22%増)の7億3700万ユーロ(約1164億円)と好調だった。
ブランド別での売上高は、売り上げの半分程度を占める主力の「グッチ(GUCCI)」が同20.3%減の40億8500万ユーロ(約6454億円)、「サンローラン(SAINT LAURENT)」は同8.6%減の14億4100万ユーロ(約2276億円)と減収。「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は同0.4%増の8億3600万ユーロ(約1320億円)と前年同期並みだった。
しかし、これを営業利益で見ると、「グッチ」は同44.4%減、「サンローラン」は同34.3%減、「ボッテガ・ヴェネタ」は同28.4%減と軒並み2ケタ減となっており、厳しい状況が浮き彫りに。こうした状況を踏まえ、同社は下半期の営業利益は30%減を見込むと発表した。
ケリング経営陣の見解は?
フランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼CEOは、「難しい市場環境によって売上高と収益性が圧迫されているが、成長軌道に戻るべく尽力している。今後も状況を鑑みつつ、強い意志と自信を持って長期的な価値を生む投資を続けていく」と語った。
オペレーションおよび財務部門を統括するジャン・マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)副CEOは、アナリスト向けの決算説明会で、「6月から7月にかけてマクロ経済がさらに悪化した。小売環境が非常に不安定な中、下半期の見通しを示すことは難しい」と述べている。
「グッチ」は9月発売の新作バッグに期待
同社が成長軌道に戻るためには、主要ブランドである「グッチ」の復活が急務だ。4~6月期(第2四半期)における売り上げの約4分の3は定番商品によるものだが、価格が比較的安定していることもあり、客足の減少がそのまま売り上げ減に直結したという。なお、同ブランドの売り上げの半分程度をレザーグッズが占めているため、9月に発売予定の複数の新作バッグに大きな期待がかかっている。
ケリングはここ数年、傘下メゾンのさらなる高級化に取り組んでいるものの、ウエアやバッグの新作は幅広い顧客層や価格帯をカバーするものになるようだ。「サンローラン」の社長兼CEOも務めるフランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)=ケリング副CEOは、「エントリープライスの商品をそろえることも重要だ。いずれの新商品も、それぞれ適切な顧客層に向けたコミュニケーション戦略に基づいて発表する」と説明。一方で、「『グッチ』の利益率は、品質のさらなる改善、店舗の改装、コミュニケーション分野などへの投資による影響を受けたが、短期的な利益のために長期的な目標に関する妥協はしない」と話した。