ビューティ

チークの新潮流、秋のトレンドは発色しない「ステルスチーク」

秋冬のメイクアップアイテムが続々発売される中で、今シーズン注目したいのは「チーク」の存在だ。これまでチークの役割だった「血色感の演出」とは一線を画し、あまり発色しないラベンダー系のカラーが目立つ。一部で「貧血チーク」とも呼ばれるこのアイテムに、今注目すべき理由とは?肌作りやメイクのトレンドからひもとく。

血色とは一線を画するラベンダー系「貧血チーク」

チークは、長らく血色感の演出に用いられてきたアイテムだ。頬全体にふんわり幅広くぼかす「愛されチーク」や、目の下から目尻にはんなりと入れる「ホロ酔いチーク」など、メイク法のトレンドは移り変わっても、目的は肌に血色感を添えること。当然、使う色もアプリコットやピンクなど、赤みを帯びた暖色が中心だった。

この流れに変化が生じたのは、数年前にコントゥアリングメイクが流行したころだろうか。フェイスラインにダークなベージュ、頬骨の上に明るいハイライトをぼかすことで、引き締まった小顔印象へと近づくメイク法である。ただし、対象となる部位は頬に限らず、鼻のつけ根やまぶたなど多岐に渡るため、厳密にはチークとは少々違ったメイク法だった。

そんな中、コロナ禍から徐々に目を引くようになったのがラベンダー系のチークである。肌本来の透明感を引き出す一方で、体温を感じさせないのが特長の1つ。一部では「貧血チーク」と呼ばれており、言い得て妙と感心してしまう。当時は頬がマスクに覆われており、露出している目元のメイクを引き立てながら、唇との間を自然につなぐ役割を担っていた。そして、マスクにつきにくい点も重要だった。

発色しないステルスな肌効果
ただし、つけるとつけないとでは格段の差が!

そして、この秋各社から登場したのが、ラベンダーやベージュなど体温を感じさせないカラーと、ピンクなどの暖色がセットになったパレット。いずれの商品も、特長は発色しないことにある。これまでのチークがポッと上気したような表情を演出するとしたら、新しいチークの表情はあくまで平熱モード。暖色も薄づきであるため、「ちゃんとついてる?」と心配になるかもしれない。

これをポジティブに捉えるなら、重ねても失敗しにくいともいえる。メイクが得意ではない私などは、ありがたいと感じてしまうほど、ブラシを重ねるごとに少しずつ血色感が増していくのだ。さらに、微細なパールの働きで、自然な艶が生まれる点も見逃せない。頬の丸みを立体的に際立たせ、健康的な印象が手に入る。

確かに、これまでのチークに比べると「パッと見分かりにくい」けれど、あるとないとでは大違いのステルスな肌効果を実現したチーク。透明感を引き出し、肌そのものの血色感を生かして、自然な艶を添える――。このライブな質感は、大人の肌にこそ不可欠だ。

ステルスチークの裏側には「ファンデの進化」あり!

何故今、このようなステルスチークが台頭したのだろう。大きな理由は、ベースとなるファンデーションの進化に尽きる。これまでのファンデーションは、多かれ少なかれ「カバー力」と「質感」がトレードオフの関係にあった。

肌の色ムラや影を顔料によって覆い隠し、均一に(一歩間違うと、のっぺりと)整える一方で、人肌ならではの濡れたような質感は失われてしまう。当然、肌が持つ血色も覆い隠されるため、チークによって後から補う必要があった。

一方で、近年のファンデーションはというと、粉体や光の拡散技術が格段に進化したおかげで、素肌の質感を生かすことが可能になっている。また艶を演出するパールも、ギラッと光るものではなく、より繊細な質感へと進化。うっすら汗をかいたような、自然な艶が手に入るようになった。

このようなベースメイクを施した肌には、血色感を「あとのせ」するのではなく、肌の血色を上手に取り込みながら、より自然に生かすほうがしっくりくる。いかにもメイクしましたという血色ではなく、素肌の血色とチークによってもたらされる「あるかないかの血色感」のバランスが重要なのだ。ここに、ステルスチークの意義がある。

キーワードは「ミュート感」この秋注目のチーク3選

2024年秋冬は、トレンドの面からも「発色しないチーク」が注目されそうだ。今シーズンは、多色使いのアイパレットやアイライン、眉をふんわり染めるアイブロウなど目元関連のアイテムが充実している。インテンスのある目元を引き立て、口元とのバランスを考慮すると、チークは「程よいミュート感」が最適解といえる。

今回は、ほんのり血色感を添えるミュート系カラーと、肌の透明感を引き出すラベンダーを組み合わせた「ステルスチーク」を代表するアイテムを紹介する。

程よい血色と立体感
日本人のために生まれたカラー

ディオール(DIOR)」からは、コントゥアリングとチーク、ハイライトを1品でかなえるパレット“ディオールスキン ルージュ ブラッシュ カラー&グロウ”が登場。左のチークカラーはシルキーでマットな質感で、肌の透明感を引き出しながら、ほんのり頬全体に血色感を添える。右のハイライトは繊細な多面パールの力で、光を操り絶妙な艶感を演出。“287”は日本女性のために作られたピンク マットとライラック グロウの組み合わせ。肌に溶け込むようにやわらかくなじみ、澄んだ肌印象へと導いてくれる。

ブラー効果で美肌を演出
オイリーレス処方の軽やかチーク

スック(SUQQU)」は、日本の四季折々の風景など「移り変わりの美」をグラデーションで表現した“ブラーリング カラー ブラッシュ”を展開する。既存のチークよりオイルの配合量を減らすことで、空気を含んだような質感を実現した。左側のチークカラーは上品な血色と艶を、右側のハイライトカラーは微細なパールを配合し、立体感を自在に演出できるのが特長だ。06は重ね付けするほどに、透明感と淡い血色が生まれるライラック。ブラー効果で肌悩みをカモフラージュしながら、儚げな印象を演出する。

自然な印影を生み出し
素肌までもひときわ美しく

乗せるパーツをそれぞれ想定し、質感や発色、パールの種類まで緻密に計算しているのが、「RMK」から登場した“シェイド & グロウ フェイスパレット”だ。コントゥアリングカラーとチークには自然なツヤを演出するセミマットな質感を選び、2色のハイライトには微細なパールを配合。シェーディングには透明感のあるトープを選び、立体感を自在に操ることができる。“01”は青みニュアンスのパレット。いずれのカラーも薄づきで、鼻筋や目元を含め顔全体に自然な印影を演出することで、素肌そのものを美しく見せる。

上記で紹介した「RMK」のパレットが目指すのは「自分史上ベストな素顔」であるという。
これまでチーク、シェーディング、ハイライトなどいくつものアイテムを使い、プロがテクニックを駆使して演出していた立体感や人肌の質感が、1つのパレットでかなうなんて、いい時代になったなと思わずにはいられない。

一見脇役に見えるかもしれないけど、今シーズン「ステルスチーク」は、私の中で“推し”である。メイクがあまり得意でない人こそ、ぜひ挑戦してみてほしい。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。