資生堂の2024年1~6月期連結決算は、売上高が前年同期比2.9%増の5085億円、コア営業利益が同31.3%減の192億円、純利益が同99.9%減の1500万円だった。トラベルリテール・米州・中国事業の減速に加え、非経常項目で主に日本事業の早期退職支援プランに関する構造改革費用を計上したことが影響した。なお、通期予想は据え置く。
事業別の売上高は、日本事業が同13.1%増(実質13.3%増)の1415億円だった。ブランドの選択と集中による投資のメリハリが奏功し、「シセイドウ(SHISEIDO)」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「エリクシール(ELIXIR)」が力強く成長した。美容液ファンデーションの打ち出しも後押しし「シセイドウ」の“エッセンス スキングロウ ファンデーション”が好調に推移。中価格帯は全体を上回る高成長となった。インバウンド消費は中国を除き、着実に回復した。
トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)は同13.7%減(実質22.7%減)の668億円だった。日本では力強い回復を見せたが、中国海南島・韓国では、中国人旅行者の消費行動の変化や、消費意欲の低下が顕在化し、「想定以上に深いマイナスとなった」(廣藤綾子CFO)。
中国事業は、同0.8%増(実質6.6%減)の1316億円だった。価格競争に巻き込まれる中、「クレ・ド・ポー ボーテ」「NARS」は堅調に成長。一方で、ALPS処理水の海洋放出後の日本商品買い控えの影響が残った「シセイドウ」は苦戦を強いられた。
米州事業は、同8.4%増(実質5.4%減)の572億円だった。「ナーズ(NARS)」や「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」において、一時的な生産減による出荷減が影響し、減収となった。欧州事業は同19.5%増(実質11.8%増)の628億円だった。「ドランクエレファント」が2ケタ成長を見せたほか、フレグランスも貢献した。アジアパシフィックは同12.3%増(実質5.9%増)の344億円だった。
下期は中国で「シセイドウ」をテコ入れ
下期は、足元が厳しい中国市場の対応を急ぐ。中国事業で売り上げ構成比の高い「シセイドウ」は、次なるヒーロープロダクトの積極的な開発と戦略マーケティングを強化し、ブランドのテコ入れを図る。主力エイジングケアライン“バイタルパーフェクション”と最高シリーズ高峰シリーズ“フューチャーソリューション LX”のリニューアルに加え、“エッセンス スキングロウ ファンデーション”の発売を予定する。「持続的な成長のために、トラベルリテール市場にも目を配り、過度な価格競争の波に飲まれ悪循環に陥らないよう、バランスに気をつけたマーケティングなどを実施する」(廣藤CFO)。
インバウンドに関しては、資生堂ジャパンが7月に発足したインバウンド専用チーム“ツーリストマーケティングチーム”と、資生堂トラベルリテール、中国とその他アジア地域が連携し、日本から世界への情報発信の強化を図る。また、デジタルの投資強化や、戦略的M&Aの検討も進める。インドや中東などの新興市場への展開も強める。「現地法人の設立が完了したことで、より積極的な投資による高い成長の実現を目指す」(藤原憲太郎COO)。
11月には、中国消費の減速やリスクの顕在化といった課題に対し、新たな経営戦略を発表する予定だ。全社を挙げて、ブランドポートフォリオの再構築やAIを活用した開発、グローバル体制の見直しなどを行う。藤原COOは、「資産の選択と集中を進め、キャッシュフローも意識した経営オペレーションの組織浸透を図る」と意気込む。