日本繊維産業連盟(繊産連)と欧州繊維産業連盟(EURATEX、本部:ブリュッセル)は昨年11月、繊維製品の即時関税撤廃を求める共同声明を出した。両者はともに、日本とEUの繊維及びアパレル関連の主要団体で構成される上部団体で、関税撤廃要求の対象に糸からテキスタイル、アパレル製品まであらゆる繊維製品が含まれている。
EUとの交渉担当をしている経済産業省の担当者は、「同様の声明は、日本からは経団連や自動車団体、欧州からはファッションブランドやスポーツブランドなども発表している。日本とEUのEPA(経済連携協定)には互いにメリットが大きい。EUとは昨年4月に交渉をスタートしているが、今年4月に大きな山場を迎える」と語り、2014年をめどに関税撤廃について、日本政府とEUが合意する可能性を示唆した。
繊産連とEURATEXの共同声明によると、EUにとって日本は7番目の繊維・アパレルの輸出市場で2012年の輸出額は約19億ユーロ(約2508億円)、日本からEUへの輸出は約660億円。欧州からの輸出はアパレル製品が主だったもの。関税が撤廃された場合、インポート製品の小売価格への影響はどうなるのか?ある商社マンは「日本へのアパレル輸入の関税は10〜12%。小売価格に換算すると8%程度の引き下げ要因になるが、4月の消費税の増税を考えると、価格への影響は増税分を相殺して+αという程度」と指摘する。一方、関税が撤廃された場合ファッション関連で影響が大きいのは関税が20〜30%を超える革靴と毛皮製品で、「国内の産業保護という観点で考えると一概に喜ばしいことではないが、消費者へのメリットは大きい」(同じ商社マン)。EPAが締結されれば、関税が撤廃される公算は高い。
日本からの繊維品輸出は、テキスタイルが大半を占めると見られるが、意外と影響は小さそうだ。欧州の有力ブランド向けに大量のテキスタイルを供給しているある日本のメーカーは、「ここ最近は高級ブランドでも縫製する地域が欧州の外に移っており、出荷先はEUの地域外。関税が撤廃されてもあまり大きな影響はなさそう」という。
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