PROFILE: 山岸愛梨/気象キャスター・気象予報士
「地球温暖化」ではなく「地球沸騰化」という言葉まで叫ばれるようになった昨今、ファッション業界は「終わらない長い夏」と「始まらない短い冬」へのこれまで以上の対応を迫られている。「WWDJAPAN」8月19日号では、主要21ブランドへのアンケートと取材を通じ、「長い夏、短い冬」の新しい売り方や商品作りを探った。2回目は気象キャスターの山岸愛梨さんに「長い夏、暑い夏の傾向と対策 アパレル編」を聞いた。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年8月19日号から抜粋・加筆しています。無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
9月も過去最高に暑かった昨年並?残暑は厳しい見込み
WWD:昨年も暑かったが、今年も暑い。
山岸愛梨(以下、山岸):その通りです。7月の日本の平均気温は速報値で昨年を上回っており、過去最高を更新しました。上旬と下旬で最高気温が40度に達した地域もあり、危険な暑さです。当社が8月9日に発表した「猛暑見解」では、8月も暑く、9月も過去最高だった昨年に匹敵する「残暑」が続く可能性があります。8月は太平洋高気圧とチベット高気圧が重なる「ダブル高気圧」の影響で、下旬まで35度以上の猛暑日が続いたり、地域によっては40度前後の酷暑になる可能性もあります。
WWD:9月にも35度を超える「猛暑日」が来る可能性はある?
山岸:可能性は十分にあります。「季節の変化を感じる」という点で注目すべきポイントは、最高と最低の気温差です。平年だと9月中旬以降には最低気温が20度を下回るため、例えば朝、出社時に肌寒いと感じてカーディガンなどの羽織物が必要になったりするんです。ただ、残暑が厳しく、朝でも最低気温が25度以上の日が続くと、半袖シャツで済んでしまうため、なかなか上着が必要にならず、体感的には「夏」が続いていると感じてしまう。つまり、現時点では「長い夏」になる可能性は高いと思います。
WWD:昔と比べて、夏は本当に長く暑くなっているのか?
山岸:気象庁によると、年間の真夏日(30度以上)の日数は、30年単位で見ても直近(1994〜2023年、43日)の平均と1910〜1939年(35日)で比べると1.2倍になっています。熱帯夜(最低気温が25度以上)で比べると、100年で19日も増加しています。先ほども述べたように、熱帯夜の増加は、季節の変わり目を感じづらくしますし、服装にも影響するので、アパレル業界への影響は大きいと思います。
WWD:「酷暑」で注意すべき点は?
山岸:ファッションや服装には職業的なTPOや個人の嗜(し)好があり、基本的には「どういった服を着るか」といったことは人によってルールや自由度があり、私のような「気象キャスター」が「こういった服を着るべき」とは言うべきではないと思っています。ただ、ここまで「酷暑」が続くと、熱中症に気をつけなければなりません。7月8月のような「酷暑」はただ暑いというだけではなく、長く外出していると、生命の危険があります。外出だけでなく、家の中にいても適切にエアコンを使わなければ、同様に生命の危険がある。
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