「ザ・キャピトルホテル 東急(THE CAPITOL HOTEL TOKYO)」(以下、キャピトルホテル)は7月28日、食に関するサステイナブルな活動の一環である美食イベント「サステイナブル テーブル」を開催した。同イベントは、「キャピトルホテル」の曽我部俊典・総料理長が日本サステイナブル・レストラン協会の杉浦仁志プロジェクト・アドバイザー・シェフがタッグを組んで行っているもので、今までも、“プラントベース”“食品ロス””サステナブルシーフード&ベターミート““ウェルビーイング”をテーマにしたイベントを開催。5回目を迎えた今回は、“ネイチャーポジティブ(自然再興)”をテーマに「キャピトルホテル」の曽我部料理長をはじめ、日本料理「水簾」、中国料理「星ヶ岡」、オールデーダイニング「オリガミ」のシェフが集結して腕を振るった。
規格外品で自然生態系に優しい美食を
イベントでは、日本サステイナブル・レストラン協会の下田屋毅・代表理事や杉浦シェフがテーマの“ネイチャーポジティブ”をはじめ、サステイナビリティの観点から見た世界の食事情について語った。畜産や農業目的の森林伐採による環境破壊をはじめ、海洋環境の変化や水産物の乱獲による“海の砂漠化”が進み、食を取り巻く地球環境はここ数十年で激変している。現在、われわれは地球の1.75個分に相当する生態系資源を消費しており、この流れを変えなければ自然環境と生物多様性は失われてしまう。“ネイチャーポジティブ”とは、このような自然生態系の損失を食い止め、回復させていくことを目的にしている。同イベントでは、害獣とされるシカをはじめ、高級レストランでは採用されにくい牛のスネ肉、規格外品の野菜や果物などを使用。各シェフの感性により、これらの素材がクリエイティビティー溢れる美食コースに。各料理には、ソムリエが選りすぐったワインがペアリングされた。
オールスターシェフによる創意工夫をこらしたオリジナルメニュー
“エゾシカコラーゲンの饗宴”はその名の通り、害獣であるエゾシカのアキレス腱を使用した中華風スープ仕立ての料理で、キノコとコラーゲンのエキスが融合した滋味深い味。小さなバゲットを浸すと、また違う味わい方を楽しめる。さっぱりとした冷たい日本の前菜とコクのある温かい中華の前菜、コントラストを効かせた粋なメニュー構成だ。
シェフのクリエイティビティーが光る美しい一皿
メーンの魚料理は、杉浦シェフによるタイを余すことなく使用した“白寿真ダイとそのエキスのソース”。これも、デザートのように美しい凝った料理で、タイにマッシュポテト、夏野菜のバチュー(コンソメ煮)、カツオだしと醤油で味付けした野菜のゼリーにタイのアラから取ったソースが添えられ、王冠のようなチュイルがのせられている。アラからとったソースは正に“海の幸”を凝縮した濃厚な味で白身魚にぴったり。ゼリーやバチューなど異なる調理法で仕上げられた野菜がソースの濃厚さを軽やかに中和してくれる。
肉料理は、曽我部料理長が手掛けた“土佐あかうしのジャレ(煮込み) 小夏の香り 土佐の有機野菜を添えて”。高級レストランで提供される肉料理の多くはヒレかサーロインだが、ここで使用しているのはスネ肉。しかも、肉だけでなく、脂身とスジも使う。このような主役に程遠い部位にどれだけプロが価値を与えられるか、料理長の腕の見せ所だ。うしのジャレの周りに野菜がリズミカルに置かれ、軽やかな印象。濃厚な味わいのジャレには、高知特産の小夏の佃煮を添えることで、肉の旨味をさっぱり爽やかに引き立てている。肉料理に果物を加えることで、味わいに広がりを持たせる技はさすがだ。
夏の情緒を感じる絵画のようなデザート
今回のイベントで実感したのは、規格外や本来破棄されるような食材であっても、
一流シェフの想像力と手腕で美食に生まれ変わるということ。自分が手掛けたメニューについて生き生きとプレゼンするシェフの姿を見て、どんな食材でも美味しく仕上げる料理人としてのチャレンジ精神とプロ意識を感じた。日本サステイナブル・レストラン協会では、外食産業のサステイナビリティを推進するコミュニティーを運営しており、サステイナブルなアプローチのケータリング業者などの紹介も行っている。