「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を傘下に持つタペストリー(TAPESTRY)の2024年6月期決算は、売上高が前期比0.1%増の66億7120万ドル(約9739億円)、営業利益は同2.7%減の11億4010万ドル(約1664億円)、純利益は同12.8%減の8億1600万ドル(約1191億円)だった。
なお、輸送費がやや低下したことや業務改善などにより、粗利益率は250ベーシスポイント(2.5%)上昇して73.3%だった。
ブランド別の売上高では、主力の「コーチ」が同2.7%増の50億9530万ドル(約7439億円)と微増を維持したが、「ケイト・スペード ニューヨーク」は同5.9%減の13億3440万ドル(約1948億円)、「スチュアート・ワイツマン」は同14.2%減の2億4150万ドル(約352億円)と減収だった。なお、いずれのブランドも引き続き北米市場への依存度が高く、売り上げに占める割合は「コーチ」が60%、「ケイト・スペード ニューヨーク」は81%、「スチュアート・ワイツマン」は67%となっており、米国の景気減速やそれに伴う国内需要の低下が業績に響いた。
地域別の売上高では、欧州が同14%増(現地通貨ベース、以下同)、アジア太平洋地域(日本と中国を除く)は同9%増、日本は同5%増、中国は同3%増だったものの、主要市場である北米は同1%減だった。
なお、四半期ベースで見ると、24年4~6月(第4四半期)の売上高は前年同期比1.7%減の15億9110万ドル(約2323億円)、営業利益は同14.1%減の2億3500万ドル(約343億円)、純利益は同28.9%減の1億5930万ドル(約232億円)と減収減益だった。しかし、いずれもアナリスト予想をやや上回ったことを好感し、決算を発表した8月15日の株価は前日比3.2%高の39.20ドル(約5723円)となった。
ジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)最高経営責任者(CEO)は、「イノベーションの推進や消費者とのつながりの強化といった事業戦略を揺るぐことなく進めたことにより、変化の激しい小売環境の中でも、第4四半期は予想を上回る結果となった。大胆なビジョンの下、今後も成長を続け、株主価値を拡大していく」と語った。
停滞中のカプリ買収について質問が相次ぐ
タペストリーは23年8月、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」を擁するカプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)の買収に合意しており、24年末までに取引が完了する予定だった。しかし、米連邦取引委員会(FTC)は24年4月、本件を停止する仮処分を求めて訴訟。“アクセシブル ラグジュアリー(Accessible luxury)”市場の独占に関する懸念が一つの争点となっている同裁判は現在も進行中のため、取引は保留となっている。
今回の決算発表でも、アナリスト向けの説明会では本件に関する質問が相次いだ。金融大手ウェルズ ファーゴ(WELLS FARGO)のアイク・ボルーチョウ(Ike Boruchow)=アナリストは、「当初の買収案である“プランA”が成立しなかった場合、代案となる“プランB”はあるのか」と質問。これに対し、クレヴォイセラCEOは「そうした二択の状況と捉えるべきかは疑問が残る」と前置きした上で、「取引の利点に自信を持っており、引き続きその完了に向けて尽力していく。しかし、当社は本業においても力強く成長しているし、付加価値の創出には複数の方法がある」と回答した。
カプリは24年第1四半期も苦戦
なお、カプリの24年3月期決算は、売上高が前期比8.0%減の51億7000万ドル(約7548億円)、営業損益は前年の6億7900万ドル(約991億円)の黒字から2億4100万ドル(約351億円)の赤字に、純損益も6億1900万ドル(約903億円)の黒字から2億2900万ドル(約334億円)の赤字となった。
直近の24年4〜6月期(第1四半期)では、売上高が前年同期比13.1%減の10億6700万ドル(約1557億円)、営業損益は前年同期の8000万ドル(約116億円)の黒字から800万ドル(約11億円)の赤字に、純損益も4800万ドル(約70億円)の黒字から1400万ドル(約20億円)の赤字となり、引き続き苦戦している。