ビューティ

ドリス・ヴァン・ノッテン、香水開発は継続 「フレグランスはクリエイティビティを発揮する新手法」

ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)は、6月に発表した2025年春夏メンズ・コレクションで自身のブランド「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のデザイナーを退任したが、フレグランスの開発には関わり続けている。新しい4種のフレグランスを8月19日にブランド直営店と公式ECで発売し、9月1日から英百貨店セルフリッジ(SELFRIDGES)でも取り扱う。米「WWD」は同氏に、フレグランス作りにかける思いについて聞いた。

約40年間ファッション界で活躍してきたドリスは、「10種のオードパルファムからなるコレクションを作ったとき、本当に楽しかった。とても面白いプロセスだし、クリエイティビティを発揮する全く異なる方法だから、ぜひ続けたいと思った」と話す。「香りというものは、本当に抽象的だ。これまでずっと色や生地、素材を扱ってきた私にとって、フレグランスの開発は新しい挑戦なんだ」と続ける。

ドリスは、2022年3月にパリで発表したブランド初のビューティコレクションでフレグランス作りに目覚めた。「私たちが創り出したものよりも、まだずっと多くの可能性があると感じていたので、続けない理由がなかった」と話す。そして、「ベネツィアから戻ったばかりで、図書館を歩き回っていたとき、とても蒸し暑かったんだ。古い本は、あまりいい匂いではない。しかし、その場所の美しさや差し込む光、匂いの交わり方に心を打たれた。もしかしたら、香りというもので新たな表現ができるかもしれないと思った」と振り返る。同ブランドのビューティコレクションは、23年4月に日本に上陸している。

敏腕調香師らによる斬新な調合

「調香師たちには、『私を驚かせ、衝撃を与えなさい』と言った。『原料や、その量について、私が考えもしなかったものを見せてください』と」。その結果、マダガスカル産とタヒチ産のバニラを配合した、スイスの香料メーカー、フィルメニッヒ(FIRMENICH)のアレクサンドラ・モネ(Alexandra Monet)による“ヴァニーユ カムフラージュ”が生まれた。また、米香料メーカーIFFのジャン・クリストフ・エロー(Jean Christophe Herault)による“クレイジー バジル”は、“カンナビス パチュリ”に代わるドリスの“お気に入り”となった。

新作は、独香料メーカーのシムライズ(SYMRISE)のスージー・ル・ヘリー(Suzy Le Helley)によるグレープフルーツとレザーの香り“ビター スプラッシュ”と、IFFのジュリアン・ラスキネ(Julien Rasquinet)とポール・ゲラン(Paul Guerlain)による“カモミール サテン”を含む4種だ。ドリスは、「もう少しリッチで重厚的な香りを作りたいと思っていたときに、調香師たちは、リッチな香りでありながら、親しみやすいカモミールと、官能的ともいえる重厚なバニラの独特な組み合わせを提案してくれた」と話す。サステナブルな手法で製造し、自然由来成分を含む新作について、「結果にはとても満足している」と続ける。

芸術作品のようなボトル

ドリスは、パッケージにもこだわっている。「そこで、私のファッションデザイナーとしてのスキルが生きてくる。なぜなら、私は本当に香水を着飾るから。ボトルの中で香水をつけている、実在しない人物を着飾るのだ」と語る。「最初のアイデアは、香りの中にある不可能な組み合わせ、つまりは衝突をボトルにも反映させることだった」。ボトルには、磁器や彫刻を施した金属など、複数の素材を採用している。ドリスにとってこのプロセスは、ファッションのミニチュアを作るようなもの。「服を作るのと同じ技術が必要なんだ」と話す。“クレイジー バジル”には大量のバジルを使用しているため、不透明なガラスとプラスチックの2種のグリーンを採用した。

ドリスは、「私はほとんど全てのことに同じ執着心を持っているんだ。庭造りも、料理もとても熱心にする。すてきな盛り付けや花を添えなければ、料理をキッチンから持ち出すことはできない。なぜなら、私は鼻や口と同じくらい、目でも食事をするから」と語った。

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