情報筋によれば、米百貨店サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FITH AVENUE)などを擁するカナダの小売り大手ハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY以下、HBC)による、ニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP以下、NMG)の買収が、米連邦取引委員会(Federal Trade Commission以下、FTC)および米司法省(Department of Justice)により承認されたようだ。
HBCは7月4日、米百貨店ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)やバーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)を運営するNMGを26億5000万ドル(約3869億円)で買収することに合意した。取引が成立すれば、年商100億ドル(約1兆4600億円)規模の“ラグジュアリー百貨店グループ”が誕生するが、FTCや司法省により反トラスト法(日本の独占禁止法にあたる)に違反していると見なされ、買収が承認されない可能性もあると懸念されていた。
HBCは7月19日に、買収に関する説明会をFTCに対して行っている。一般的な手続きとして、FTCおよび司法省はHBCが提出した資料などを精査し、必要に応じて30日以内に2回目の説明会の実施を求めることができる。しかし、前述の情報筋によれば、HBCは期限である8月20日の時点で2回目の説明会を求められていないため、事実上の承認と見なしているという。
なお、FTCや司法省がHBCに承認に関する何らかの通知をしたのか、連絡がないまま期限が過ぎたのかについては明らかになっていない。本件に関し、HBCはコメントを差し控えるとした。
タペストリーによるカプリ買収は保留状態
最近では、「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を擁するタペストリー(TAPESTRY)による、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」を擁するカプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)の買収が、FTCによって保留となっている。タペストリーが“手の届くラグジュアリー”バッグ市場を独占し、ブランド間の競争がなくなることは、米国の消費者にとってマイナスだとして取引を停止する仮処分を求めてFTCが提訴したためだ。
今回の取引も同様の懸念があったが、ECの台頭や、ラグジュアリーブランドが卸を縮小していることにより全体として百貨店への依存度が低下していることから、買収による市場独占の危険性は低いとFTCは判断するのではないかと見る専門家も多かったという。また、買収を承認する条件として、店舗の統廃合や人員整理などに関する制限が設けられている可能性もあるが、詳細は明らかにされていない。
日程などは未定だが、取引の成立後、HBCは百貨店の運営と店舗の土地開発などの不動産業を行う新会社サックス・グローバル(SAKS GLOBAL)を設立し、サックス・フィフス・アベニュー、そのオフプライスストアであるサックス・オフ・フィフス(SAKS OFF 5TH)、ニーマン・マーカス、バーグドルフ・グッドマンを運営する。