ネットフリックス(NETFLIX)の人気ドラマ「エミリー、パリへ行く(Emily in Paris)」の待望のシーズン4のパート1が配信中だ。パート2は9月12日から配信される。
リリー・コリンズ(Lily Collins)演じるエミリー・クーパー(Emily Cooper)の恋に仕事に大忙しな人生の行く末はもちろん、登場人物たちの個性溢れるファッションを心待ちにしている視聴者も多いはずだ。そこで、シーズン3から同作のメーンスタイリストを務めるコスチュームデザイナーのマリリン・フィトゥシ(Marylin Fitoussi)が、新シーズンのファッションをキャラクターごとに解説してくれた。
彼女によると、シーズン4は“リベンジ スタイル シーズン”だそうだ。ダイアナ妃がアイコニックなブラックの“リベンジドレス”を披露してから30年、劇中のエミリーも同じ道を辿っているとかいないとか。
エミリーの“オードリー・ヘップバーン”ルック
新シーズンのトレーラーで公開された仮面舞踏会シーンのエミリーの衣装は、映画「ティファニーで朝食を」の原作者トルーマン・カポーティ(Truman Capote)が1966年にニューヨークのプラザホテルで主催した“ブラック アンド ホワイト ボール”に着想したもの。「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のデザイナー、ハリス・リード(Harris Reed)に3パターンデザインしてもらい、その中から映画「マイ・フェア・レディ」のオードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)をオマージュした、太いストライプの黒と白のジャンプスーツに取り外し可能なボールスカートを合わせたルックを選んだ。
さらにエミリーがスキーへ行くシーンでは、1963年の映画「シャレード」でヘップバーンが見せた、毛皮に身を包み「ピエール マルリー(PIERRE MARLY)」の大ぶりなサングラスをかけた有名なウィンタールックを再現した。
撮影のためオリジナルのサングラスを手に入れたフィトゥシは、「リリーがサングラスを試着したとき、私たちは泣いて、叫んで、鳥肌がたった」と語った。さらに、「撮影では『ピエール マーリー オプティシァン(PIERRE MARLY OPTICIEN)』が製作したレプリカを使用し、コートにはフェイクファーを使用した」と付け加えた。
このシーズンでエミリーは今までのアメリカ的なファッションからよりフランス的なファッションに身を包むようになったが、鮮やかでプリント柄の多い今までのワードローブと決別したわけではないそうだ。今の彼女のクローゼットには、「フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ(PHILOSOPHY DI LORENZO SERAFINI)」や「ジャックムス(JACQUEMUS)」「マルニ(MARNI)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」「ラ・ダブルジェイ(LA DOUBLE J.)」「ボス(BOSS)」など、さまざまなテイストのアイテムが混在しているとフィトゥシは明かす。
ミンディー・チェンのエキセントリックな装い
アシュリー・パーク(Ashley Park)演じる、エミリーの友人ミンディー・チェン(Mindy Chen)の自由なスタイリングは今作でも健在だ。
例えば、「フィリップ プレイン(PHILIPP PLEIN)」のグラフィック柄のミニスカートにダイヤモンドで装飾されたクロップド丈のブレザーとピンクのセーラー帽を合わせたり、ターコイズカラーにピンクのバラがプリントされた「マグダ ブトリム(MAGDA BUTRYM)」のジャンプスーツに同色のファーの帽子を合わせたりと、心躍るスタイリングを次々と披露する。
シルヴィーのニュールック
フィトゥシによると、フィリッピーヌ・ルロワ=ボーリュー(Philippine Leroy-Beaulieu)演じるエミリーの上司シルヴィー(Sylvie)は、思いもよらない秘密のファッションスタイルを第2部で見せつけるそうだ。
これまでのシルヴィーの装いには、「サンローラン(SAINT LAURENT)」や「シャルロット シェネ(CHARLOTTE CHESNAIS)」「トッズ(TOD’S)」などが多く見られたが、新シーズンでは「プッチ(PUCCI)」や「グッチ(GUCCI)」などを取り入れ華やかな装いにシフトチェンジした。
個性豊かな助演俳優たち
フィトゥシはメーンキャラクターだけでなく、サポートキャラクターの衣装も手掛けている。
新シーズンでサミュエル・アーノルド(Samuel Arnold)演じる同僚ジュリアン(Julian)のために仕立てられた衣装は全て、ベルギー出身のファッションデザイナー、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)によるもの。撮影のために、個人的なアーカイブから多くの作品を貸し出してくれた。
一風変わった同僚リュック(Luc)を演じる俳優のブルーノ・グエリ(Bruno Gouery)は、以前はファッションに無関心だったが、撮影を通して自分のキャラクターが着るものに興味を持ち始めたそうだ。リュックの特徴でもある首元のクラバット(長方形のスカーフ)は、柔らかな質感の事務服やスリーピースのスーツによく合う。
リュカ・ブラヴォー(Lucas Bravo)が演じるシェフのガブリエル(Gabriel)のコーディネートは、“親しみやすい近所のあの人”感を残す必要があったため一番特殊だったそうだ。デザイナーズブランドを着せるとモデルのようになってしまうため、ミニマリズムやサステナビリティに特化したフランスのブランドを選びキャラクターに沿ったルックを完成させた。
このシーズンでフィトゥシは、中国発の「ラクシー(RAXXY)」やベトナム発の「SIXDO」、インド発の 「マニッシュ アローラ(MANISH ARORA)」と「ガウラヴ グプタ(GAURAV GUPTA)」、モルドバ発の「フィダン ノブルゾバ(FIDAN NOVRUZOVA)」など世界各国のブランドを意識的に取り入れたと語った。
「もしシーズン5があるなら、さらに多くのデザイナーに輪を広げたい。メキシコ、チリ、ペルーのデザイナーが気になる。若いデザイナーたちに活躍の場を与えられるのは光栄なことだ」。