ここ最近、香水砂漠と言われていた日本でフレグランスが盛り上がっている。「シャネル(CHANEL)」や「ディオール(DIOR)」などメジャーなものから、「ル ラボ(LE LABO)」「ディプティック(DIPTYQUE)」「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)」といったニッチフレグランスまで、フレグランス市場が拡大。特に20〜30代は、ファッション感覚でフレグランスを着替えるように楽しむようになった。中には、行列ができるブティックもあり、ちょっとしたフレグランスブームだ。
一方で、フランスと言えば、フレグランス大国だ。風呂の文化がなかったことから、香水は人々の日常に欠かせないものとして定着。フランスでは、「ゲラン(GUERLAIN)」などの有名ブランドからニッチなものまで、数多くのフレグランスブランドが誕生している。南仏のグラースは香水の都と呼ばれ、香水産業の中心地として知られ、多くの香水メーカーが天然原料であるラベンダーやジャスミン、バラなどの農園を持っている。また、業界で活躍する調香師の多くがグラース出身だ。このようにフレグランスは文化の一つとしてフランスに根付いている。フレグランス後進国の日本でブームが起きるのは分かるが、7月に久々にフランスを訪れて驚いた。パリでも、フレグランスがブームになっている。
シックなサントノレ通りにフレグランスブランドが集結
右岸にあるサントノレ通りは、ラグジュアリーやファッションブランドのブティックが軒を連ねるシックなショッピング通りとして知られている。久々にパレ・ロワイヤルからヴァンドーム広場方面に歩いてみると、昔からあるカフェやラーメン屋はそのまま。ところが、サン・ロック通りに差し掛かると、左手に「バイレード(BYREDO)」、右手に「セルジュ・ルタンス(SERGE LUTENS)」を発見。「セルジュ・ルタンス」は目と鼻の先のパレ・ロワイヤルにも立派なブティックを構えている。しばらく歩くとマルシェ・サントノレ通りまでの約100mに10軒くらいフレグランスのブティックがオープンしている。以前からサントノレ通りには、「グタール(GOUTAL)」や「イアンクス(IUNX)」などのフレグランスの店がちらほらあったが、ファッションやレザーグッズなどの店舗が多い印象だった。ところが、今や、サントノレ=フレグランス通りと言っても過言ではない。サントノレはニッチフレグランス店のハシゴに最適
空港の免税店でもフレグランスが主役に
空港内の免税店でもフレグランスの存在感が増している。シャルル・ド・ゴール空港では「ラルチザン パフューム」のブティックがオープン。免税店の中央を陣取るのは各種フレグランスだ。「ゲラン」「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」「クロエ(CHLOE)」といったメジャーなものから「ディプティック」や「グタール」などのニッチブランドまで、百貨店の売り場さながらにボトルがずらりと並んでいる。ブランド数も商品数も多く、もはや、コスメのおまけではなく、フレグランスが主役といった風情だ。
フレグランスブームは、日本だけの話ではない。フレグランス先進国のフランスでも盛り上がっているということは、消費者側の需要とメーカーやブランドによる提案の多様化が進んでいる証拠だ。嗅覚という五感に直接働きかける香り。それを嗜み、楽しむ文化は今後もグローバルに広がっていきそうだ。