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連載 ロサンゼルスで活躍するクリエイターの秘密 第1回

アリアナ・グランデやハリー・スタイルズのネイルを手掛けるブリトニートーキョー LAで大活躍の秘密

PROFILE: ブリトニートーキョー(Britney TOKYO)/ネイルアーティスト

ブリトニートーキョー(Britney TOKYO)/ネイルアーティスト
PROFILE: 東京生まれ、千葉育ち。高校でハワイやシアトルに留学し、現在はロサンゼルス・ハリウッドを拠点に活動する。ハリウッド映画やミュージックビデオ、コマーシャルのネイルを担当するほか、ニューヨーク・ファッション・ウイークのバックステージやアート作品の制作も手掛ける。顧客にはアリアナ・グランデやキム・カーダシアンらセレブリティが名を連ねる

レッドカーペットやハリウッド、映画や音楽、ファッションの煌びやかな世界と大自然が共存する大都市ロサンゼルス。世界のエンターテイメントの発信地であるこの地へ、日本からさまざまなクリエイターが移住している。ロサンゼルスに移住して3年、スタイリスト歴23年の水嶋和恵が、ロサンゼルスで活躍する日本人クリエイターに成功の秘訣をインタビュー。多様な生き方を知り、人生やビジネスのヒントを探る。第1回は、名だたるセレブリティを担当するネイルアーティスト、ブリトニートーキョーの半生に迫る。

日本では「ウィアード」でも、米国では「ギフテッド」

水嶋和恵(以下、水嶋):ネイリストになった経緯を教えてください。

ブリトニートーキョー(以下ブリトニー):まず、コンピュータープログラミングやグラフィックアートを学ぶ短大を卒業し、当時流行していたアパレルブランドのショップ店員として「渋谷109」で働くことに。しかし「立ち仕事は向いていない」と気付きました。改めて将来のことを考え、座り仕事で髪色が自由な職業を探すと、選択肢は“闇金の電話番”か“ネイリスト”(笑)。親にも相談したところ「ネイリストにしなさい」と説得され今に至ります。その後、日本でネイリストの学校を卒業し、現在はロサンゼルスでネイリストをしています。

水嶋:ネイリストが夢だったわけではないのですね。

ブリトニー:ネイリストを目指していたわけではないですが、幼少期から絵を描くことが好きで、自分の爪にも絵を描いていました。幼稚園のときの夢は絵描きになること。ただ、それを周囲に伝えられないシャイな子どもでした。今思えば順応性のないタイプだったのかもしれません。日本では「ウィアード(変わっている)」と言われる人も、米国では「ギフテッド(神が与えた才能がある)」な人と呼ばれることがあります。今ロサンゼルスに住んでいて、自分の居場所を見つけたと感じています。

水嶋:移住先にロサンゼルスを選んだ理由は?

ブリトニー:当時付き合っていた人がロサンゼルスへ行くことになり、一緒に渡米しました。

水嶋:現在ネイリストとして活躍する傍ら、どんなプロジェクトを手掛けていますか?

ブリトニー:「トーキョースパイス(TOKYO SPICE)」というブランドで商品プロデュースをしています。米国市場に向けてはもちろん、日本やカナダ、メキシコ、オーストラリア、シンガポール、台湾、韓国などグローバルに展開しています。ネイリストとしてさまざまな商品を使用する中で「この商品が良い」と感じたメーカーとコラボレーションしています。

ハリー・スタイルズとの撮影現場で結婚を決意

水嶋:以前雑誌「フィガロ(FIGARO)」と「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITON)」のタイアップ撮影でご一緒させていただいたのが、印象的です。鮮やかなグリーンカラーのモノグラム柄バッグに合わせたロングネイルがとても素敵でした。最も印象に残っているプロジェクトはありますか?

ブリトニー:うれしいです。1つに絞るのは難しいですが、ハリー・スタイルズ(Harry Styles)とのプロジェクトは良く覚えています。ハリーとの撮影当日、現在の夫と現場に行くことになり。その時はまだ結婚していませんでしたが、ハリーの横に彼が並んでも「カッコ良い!!」と思って。それで結婚を決めたんです。歌手のリタ・オラ(Rita Ora)とご一緒させていただいた際には、会って一言目に「ブリトニーにネイルをしてもらうのが夢だったの!」と言ってくださり、すごくうれしかったです。

水嶋:現場と一言にいっても、スチール(写真撮影)、ミュージックビデオ、レッドカーペット。さまざまな場面で活躍されていますが、各現場での作品づくりに違いはありますか?

ブリトニー:スチールはシンプルなネイルの場合が多く、ミュージックビデオは凝ったデザインをオーダーされることが多いです。やはり、クリエイティブなオーダーは形にしていくのが楽しいです。

ネイリスト活動3カ月でアリアナ・グランデからDM

水嶋:ロサンゼルスで成功されるまで、どれくらいの時間がかかりましたか?

ブリトニー:自分ではまだ成功しきれていないと思っています。ロサンゼルスに移住した当初は学生の身分だったので、6年ぐらいはネイリストを本職にしていませんでした。俗に“セレブ”と呼ばれる方々からの依頼が来るようになったのは、ネイリストという職業を始めてから3カ月くらいだと思います。

水嶋:3カ月!どのような依頼がきましたか?

ブリトニー:アリアナ・グランデ(Ariana Grande)から、インスタグラムでダイレクトメッセージが来たのが最初です。「ちょっと今から来られる?」というような、とてもフランクな内容でした。まだインスタグラムが始まったばかりの頃で、「嘘かな、もしかして騙されてる!?」と思いましたが、ロケーション検索で私のことを見つけてくれたようです。

水嶋:ネイリストとしての現在のポジションを確立するまで、苦労はありましたか?

ブリトニー:どうしてもネイリストになりたい、有名になりたいと思って今に至ったわけではなく、私はすごくラッキーなんだと思います。2013年当時は英語力も乏しかったので、現場で他のスタッフに陰口を言われていても気づかず。今になって、「あのとき意地悪なことを言われてたかも?!」と(笑)。それぐらい、当時はネイルアーティストという職業がまだ確立されていなかったんですよね。

水嶋:ブリトニーさんの活躍が、今のネイルアーティストの存在や地位を大きく変えたと思います。

ブリトニー:その当時米国では、ヘアメイクを含むビューティ業界で、アジア人アーティストが少なかったです。米国では言ったもの勝ち。「私はアーティスト」。言ったその先が大事だと思います。

水嶋:ブリトニートーキョーという名前もキャッチーで、素敵ですよね。何か由来はありますか?

ブリトニー:最初に縁があり勤めたネイルサロンで、米国で覚えてもらいやすいように”ブリトニー”という名前をつけました。当時ブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)が人気で、私も彼女のブロンドヘアーに憧れ真似をしていて。職場で出身地を聞かれることが多く、思いついたまま名刺にペンでTOKYOと書いたのが後に定着したんです!嘘みたいな本当の話です。

「ロサンゼルスの全てが好き」

水嶋:私がロサンゼルスに移住してから周りの人を見ていて思うのは、皆「幸運の持ち主」であるということ。ブリトニーさんは強運の持ち主!ロサンゼルスに来て今何年目ですか?

ブリトニー:18年目です。普段はハイキングが好きで週5で行くことも。カルバーシティにあるハイキングレールに行くことが多いです。車を少し走らせるだけで気軽に行けるので、そういう点ではロサンゼルスは東京よりチルだと感じます。

水嶋:住んでみて再発見したロサンゼルスの魅力はありますか?

ブリトニー:天気がよく、気持ちが良いです。移住する前に一度訪れたことはあったものの、住んでみると気候の良さは再認識しますね。住んでいる人々もナイスだし、ロサンゼルスの全てが好きです。

水嶋:天気もここに居る人達も、サニーでポジティブですよね!今後のプロジェクトの予定は?

ブリトニー:今後は、今まで以上にアート作品を制作したいと考えています。ドイツ・ハンブルクのハンブルク美術工芸博物館で作品を展示することが決まりました。気がつけば幼い頃から好きだったことが仕事に。今、流れ的にとても良いと感じています。

水嶋:話を聞いていると、人生の選択が常に合っていて、本当に引きが強い。流れに逆らわず、その流れに上手に乗ることで今のブリトニートーキョーがあるように感じます。

私の連載を通して読者のみなさんが多様な生き方を知り、人生やビジネスへのヒントを得てくれたら良いなと思います。

PHOTOS:KENTARO MINATO[SEVEN BROS. PICTURES], TEXT:ERI BEVERLY

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