多くのファンに惜しまれながらクローズした「メルト ザ レディ(MELT THE LADY)」のディレクターAyaが、新たなブランドをスタートした。20代の女性たちに支持され人気絶頂の最中だったにもかかわらず、当初から掲げていた「7年でブランドを終了する」という決意を変えず区切りをつけたのが2024年7月。そこから待ったなしで告知された新章の幕開けに、喜んだ顧客も多いはずだ。Ayaに新ブランド「ザレッドスレッド(THEREDTHREAD)」の全貌を聞いた。
「赤い糸で紡ぎつなげる」
Aya:後継ブランドを考え始めたのは1年半前くらいからです。終了した1週間後の8月頭には「ザレッドスレッド」のインスタグラムアカウントを作りました。すぐ次のブランドに移行したことについては、私の中で違和感はありませんでした。「メルト ザ レディ」とは完全に別物ではなく、そこで築いた絆や紡いだ赤い糸を引き継ぎたいという思いがあったので。
それに、いくつか伏線を仕込んでいたんです。「ザレッドスレッド」を象徴する赤いラインをノベルティーのTシャツに刺しゅうしたり、24年春夏コレクションムービーに赤い花を効果的にちりばめたり。私のインスタグラムのサブアカウントでもヒントを小出しにしていたので、ファンの間で話題になっていたようです。
WWD:「ザレッドスレッド」のコンセプトは?
Aya:前ブランドで得たものは、モノ作りの難しさ、チームや顧客の大切さや絆でした。7年を通してできた人とのつながりや愛を、赤い糸で表現したいと思いました。赤い糸が生地になり、洋服になり、人との絆を紡ぎつないでいくのがコンセプトです。ブランド名は、発音したときの響きが良くアナグラムっぽい遊び心が気に入って決めました。
3つのライン
“ガーネット”
“スカーレット”“バーミリオン”
1 / 9
WWD:「メルト ザ レディ」を継承している部分はある?
Aya:あります。でも、それ以上に新しい挑戦が多いです。ブランドのコアになるのは、赤の色にちなんだ“ガーネット”“スカーレット”“バーミリオン”の3ライン。“ガーネット”はトレンドカジュアル。1990年代の「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」のムードを感じさせつつ、アート的なスパイスを加えて現代的に落とし込んでいます。素材の機能性や軽さも重視しました。“つながり”を表現するデザインのカギになっているのは磁石。「メルト ザ レディ」では、ホックやレースの使い方が象徴的なディテールの1つでした。このラインでは、ロングパンツの太もも部分の磁石を外せばショートパンツとアームウォーマーにセパレートできるなど、レイヤードの幅が広がるデザインになっています。1枚でいろんな着方が楽しめるお得感も大事だと思っています。
「メルト ザ レディ」のDNAを一番感じられるのが“スカーレット”です。真っ赤なスカーレットの色のイメージから膨らませて、純粋なモードを表現しています。とはいえ、赤いアイテムはありません。ルージュのようにポイントとして、背中にラインで差し込む程度。デザインを邪魔しない控えめな提案で赤をプラスしています。
3つめの“バーミリオン”は、いつでもどこでも着られるデイリーなドレスウエアのライン。これまでのお客さまにとって、一番目新しく映るコレクションだと思います。チュールドレスは結婚式の二次会でも着られて、ジャケットやパンツと合わせれば普段使いもできます。チュールをアシンメトリーに重ねることで、真面目過ぎない遊びも。ドレスは全てワンサイズ展開と思い切りましたが、挑戦的なのはサイズだけでなく価格もです。“バーミリオン”は3万〜5万円が中心価格帯で、ドレスによっては10万円台のものもラインアップしています。
こだわったのは
クオリティーとディテール
WWD:モノ作りでこだわっているところは?
Aya:縫製や素材などのクオリティーにはかなりこだわっています。例えば“スカーレット”のデニムに使っているリベットなどの金具は全てオリジナル。ハートを重ねているようなフォルムでかわいいです。ハートはブランドのロゴにも使っていて、見え方によってはハートのようにも、横顔の唇のようにも見えるデザインにしました。この二面性もブランドにとって重要なキーワードですね。実際にリップも考案中で、コスメラインをいずれ始めたいと思っています。色などにこだわりが強いので、時間はかかりそうですが(苦笑)。
WWD:「メルト ザ レディ」のブラックやシルバーの世界観は継承していく?
Aya:モードに落とし込むとき、ブラックで表現するのが一番分かりやすいですよね。ただ、このブランドでは色の幅を広げて、シルエットや素材でモードに落とし込むことも意識しています。今後は、ベージュがメインのコレクションも考えているんですよ。これまでお客さまからは「ベージュは難しい」と言われましたが、これからは新しい角度から提案したいです。コレクションのカラーラインアップもかなり広がる予定です。
WWD:10万円台のドレスを並べるなど価格帯も挑戦的だが、想定している客層のターゲットは?
Aya:“バーミリオン”に例外はありますが、価格帯は可能な限り既存のお客さまに寄り添うかたちで努力しています。「メルト ザ レディ」で8000円だったTシャツが1万円になるイメージ。これまでも、価格より商品自体の価値を見てくれるお客さまが多かったので、ぜひ実際に手に取って見てもらって、クオリティーと価格を納得してもらいたいです。顧客は継続して20代の方が中心になると想定しています。“バーミリオン”があることで、さらに客層の幅が広がるんじゃないかと期待もしていますね。
WWD:デビューコレクションはどこで買える?
Aya:9月3日と4日に表参道のウォールウォールで予約制のポップアップショップをオープンします。ショップでは、その場で商品の購入も可能です。実際にアイテムを手に取った時の高揚感や、買った時の満足感を大事にしたいです。5日に公式オンラインストアをオープンします。
ブランドやアイテムが生まれるまでの過程も大事にされているお客さまが多いので、バックグラウンドをしっかりSNSで発信したいです。ローンチにあたって、インスタライブで商品のディテールまで丁寧に説明しようと考えています。商品の型数やデザインのギミックが多いので時間がかかりそうですが、自分の言葉でしっかり伝えたいです。
“終わりのない物語”を紡ぐ
WWD:改めて、「メルト ザ レディ」の成功理由はどこにあった?
Aya:自分もチームも本気で取り組み、それにお客さまがついてきてくれて盛り上げてくれたおかげです。ラストコレクションの発売日に店頭で接客をしたとき、泣いてくれるお客さまがたくさんいて、お手紙もたくさんいただいたんです。実は、これまでお客さまとはそんなに直接コミュニケーションをとってきていないんです。SNSでも表立ったリアクションは少なく、だからこそ自分がやっていることがファンに受け入れられるかどうかの不安がいつもありました。でも店頭には、デビューコレクションの服を着て来店してくれた方がすごく多くて。ずっと大切に持っていてくれたのだと感動しました。手探りだった7年でしたが、愛を感じました。ファンの方々は、私の深いところまで共感してくれているのだと、次のブランドへの自信にもつながりました。
絆はファンだけでなくチームにも感じています。7年間を通して、つくづく自分はこだわりがかなり強いほうだと実感しました。今回も新ブランドを立ち上げるに当たって、再確認しています。その中でもついてきてくれて、ときに的確に軌道修正してくれるチームに感謝しています。
WWD:「ザレッドスレッド」は終わりを考えている?
Aya : 今回のブランドは考えていません。人と人の繋がりや愛を表現したいと思っているので、赤い糸を通して関係性を紡ぎ、いっそう広がっていきたいです。赤のバリエーションはたくさんあるので、その分可能性は無限にあると思っています。アパレルだけでなく、ライフスタイルのカテゴリーにも挑戦したいですね。リップを中心にコスメラインを拡大しても良いし、ショップをカフェにしてフードのラインを作っても良いし、アイデアは尽きません。今後も赤にまつわるイメージからインスピレーションを膨らませていきたいです。
「ザレッドスレッド」カスタマーセンター