シャネル(CHANEL)はこのほど、スイスの独立系高級腕時計ブランド、MB&Fの株式の25%を取得した。取引金額は非公開。
MB&F(Maximilian Busser & Friendsの略)は、2005年にスイスで創業。社名は、マキシミリアン・ブッサー(Maximilian Busser)創業者に由来する。伝統的なウオッチメーカーの枠を超え、キネティックアート(動きを取り入れた、もしくは動くように見える芸術作品)を創作するというビジョンを掲げており、革新的なコンセプトウオッチの設計と製作を専門としている。スイス・ジュネーブとドバイに“M.A.D.ギャラリー”と呼ばれる店舗を構えるほか、ショップインショップの“M.A.D.ラボ”をフランス・パリ、米国・ラスベガス、台湾・台北、シンガポールに出店。また、時計の専門店でも販売している。価格帯は、ハイエンドな商品が6万~50万スイスフラン(約1000万〜8400万円)、21年に発表したより手頃なラインはおよそ3000スイスフラン(約50万円)。23年の売上高は4540万スイスフラン(約76億円)だった。
MB&Fの今後の経営体制は?
ブッサー創業者は株式の60%を、同氏のビジネスパートナーであるセルジュ・クリクノフ(Serge Kriknoff)R&Dおよび生産部門責任者は15%を保有している。両氏は今後も経営全般と創作を指揮するほか、シャリス・ヤディガログルー(Charris Yadigaroglou)=マーケティングおよび広報部門責任者とティボー・ヴェルドンク(Thibault Verdonckt)販売部門責任者も続投する。
シャネルのフレデリック・グランジェ(Frederic Grangie)時計・宝飾部門社長は、「独立性、創造性、卓越性という同じ価値観を持つMB&Fとの戦略的パートナーシップの締結をうれしく思う。専門的なノウハウと知識を維持、開発、投資し続ける長期的な戦略の一環であり、高級腕時計の製造における当社のポジションをさらに強化するものだ」と語った。
ブッサー創業者は、「現在の非常に恵まれた状況と最高の経営陣の下、長期的な未来を確固たるものにするための大きな一歩を踏み出すことは私たちに課された責任であり、来年創業20年を迎える当社にとって自然な進化だ。シャネルの投資により、当社は成長に関する圧力を受けることなく今後も独立した道を歩みつつ、必要に応じてシャネルのウオッチ製造エコシステムにアクセスできるため、事業をいっそう強化することが可能だ」と述べた。
シャネルは、1987年にアイコニックなウオッチ“プルミエール(PREMIERE)”を発表し、時計分野に進出。これまでも高級時計メーカーに投資しており、98年にべル&ロス(BELL & ROSS)、2011年にローマン ゴーティエ(ROMAIN GAUTHIER)、18年9月にモントル ジュルヌ(MONTRES JOURNE)の株式を取得しているが、取得額や持株数などは明らかにしていない。