「ケイタマルヤマ(KEITA MARUYAMA)」は1994年に誕生し、今年で30周年。丸山敬太デザイナーは動植物で飾ったテキスタイルや、和洋中の要素を融合したデザインで、“晴れの日に着る洋服”を作ってきた。しかし多幸感溢れる表現の陰では、幾度の困難も克服してきた。酸いも甘いも知りながら、それでもなお「楽しいことを生み出したい」とする彼の人生譚とは。
思えば昔から、ガーリーな子どもだった。1歳上の姉の影響もあっただろうが、かわいいものが好きで、絵を描くときは花や小鳥、お姫様なんかをモデルにしてばかりいた。父は元プロ野球選手の丸山完二。そのせいで「スポーツができて当然」と見られるのが嫌で、運動を避けてすらいた。
僕の生家は原宿にある。「神宮球場に近いから」という理由で父が家を建てたおかげで、1980年代のDCブランドブームの熱を受けながら、思春期を過ごした。近くに山本寛斎さんの店があったから、そこにいろんな人が出入りする様子を見ていたし、中学生のころから「ジュン(JUN)」や「ビギ(BIGI)」の洋服を買ってもらっていた。当時のテレビは今よりもファッション界との距離が近く、バラエティー番組でも気鋭デザイナーの最新コレクションを取り上げた。衝撃を受けたのは鼓笛隊や馬が登場する「ケンゾー(KENZO)」のフォークロアなショー。「彼みたいに楽しいものを作りたい」──ファッションデザイナーという職を強く意識した初の経験だった。
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