「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」は9月6日、 “リップ カラー”(各8250円)をフルリニューアルして発売する。キャンペーンには俳優のアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)を起用し、ブランドにとって重要なリップカテゴリーを起爆剤にブランドのさらなる前進を試みる。
親会社のエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)は2023年、「トム フォード」を23億ドル(約3312億円)で傘下に収めた。証券取引委員会への報告によれば、直近のメイクアップの売上高はリップカテゴリーの不調によって落ち込んだ。一方でフレグランスは好調で、「トムフォード ビューティ」が中核を担うELCのプレステージフレグランスは1ケタ半ばの伸びだった。
しかしなお、事業の健全性はリップカテゴリーが軌道に乗るかどうかに関わっている。ギヨーム・ジェセル(Guillaume Jesel)=ブランドプレジデント兼最高経営責任者(CEO)は、「リップはフレグランスに次いで最大のカテゴリーであり、メイクアップの中では最も大きな売り上げを占める。『トムフォード ビューティ』は今後数年で年間売り上げ10億ドル(約1440億円)に達する見込みが十分にある」と述べる。刷新するリップカラーコレクションの売り上げには言及しなかったが、業界筋は発売から12カ月で5000万ドル(72億円)に達すると予測する。
ELCは「トム フォード」を通して初めてファッションとアイウエア事業に参入し、それぞれ「トム フォード」のファッションとアイウエアのライセンスを持つエルメネジルド ゼニア グループ(ERMENEGILDO ZEGNA GROUP)とマルコリン(MARCOLIN)と契約を結んだ。「われわれは時間をかけて成長を示してきた。特に買収後は非常に利益率が高い。ビューティとファッション、アイウエアはブランドの主要な軸だ」とジェセル=ブランドプレジデント兼CEO。自身の使命を「垂直統合したブランドとして運営を続け、3軸を横断する戦略、ブランドコード、イノベーションを統合すること」とし、「世界クラスの人材を集めてクリエイティブな商品開発とマーケティングをする必要がある」と語る。
新商品のリップカラーは、「ファッションと繋がりを伝えるシリーズの一つ。リップは究極のファッションアクセサリーであり、ブランドのDNAを伝えるもの」という。マート・アラス(Mert Alas)とマーカス・ピゴット(Marcus Piggott)が撮影したジョリーのキャンペーンは、映画監督でもあったトム・フォードの仕事と呼応する。
同ブランドはジョリーの起用により、Z世代を含むグローバルな幅広い年齢層にアプローチする狙いだ。新色にはヌードカラーも含まれ、多様な層にアピールする。代表カラーであるスカーレットのルージュをまとったジョリーはリップについて「美しい色と質感。良い赤の口紅には他にほとんど何もいらない」と語った。ジェセル=ブランドプレジデント兼CEOは、「『トム フォード』のターゲットを若年層に移行したのは、専門店や複数の小売店での発売と、中国の立ち上げがきっかけだった。中国の平均的な消費者は若く、幅広い層にアピールできる」と話し、軟調な中国のプレステージ市場に、引き続き注力していく。