「私が指揮を執ってきた中で、雇用を守ることを社員との約束としてやってきた。今回は時代の流れの中で判断そのものは正しいと思っているが、経営の責任が問われて当たり前だと思う。辞めて済むことではないが、目に見える形で示す必要があった」——。14日に行なわれた三陽商会の2012年12月期決算発表の席上、社長時代から数えて20年に渡る代表取締役の座を退くことになった三陽商会の中瀬雅通・会長が語った。同社は先月、従業員の1割強にあたる230人の希望退職者を募集すると同時に、中瀬会長が3月28日付で相談役に移動し、経営の一線から離れることを発表した。
本日開示された前期決算は、売上高が前期比102.9%の1076億円、経常利益が同359.0%の59億円の増収増益だった。財務状況も改善されており、一見すればリストラの必然性はないように思える。だが杉浦昌彦・社長の危機感は強い。「この10年間は営業拠点の再編やシステム一元化などが進む一方、人的余剰を抱えながら経営してきた。利益を出せる余裕があるうちに業務を一度洗い直し、将来に備える必要がある」と述べ、さらに「『バーバリー』がどうのこうので話ではない」と15年6月末にライセンス契約の更新が迫る英バーバリー社との関連については否定した。小山文敬・副社長は「バーバリー社とは互いの意向を擦り合わせている最中。いずれにしても早く方向性をはっきりさせようと話している」「継続しないという事態は想定していない。継続すべく交渉している」と説明した。