ビューティ賢者が
最新の業界ニュースを斬る
ビューティ・インサイトは、「WWDJAPAN.com」のニュースを起点に識者が業界の展望を語る。今週は、リニューアルしても愛され続けるコスメの話。(この記事は「WWDJAPAN」2024年8月26日号からの抜粋です)
PROFILE: 渡邉弘幸/ウカ代表取締役CEO
【賢者が選んだ注目ニュース】
さまざまな媒体のベストコスメ企画には毎回注目している。そんなベストコスメの受賞アイテムに着目した記事で語られる、歴史のあるメーカーが打ち出すジャパニーズブランド三者三様のリニューアルのあり方にとても興味を引かれた。商品開発や消費者とのコミュニケーションの姿勢を垣間見ることができた。
中でも注目したのは、コーセーのロングセラー化粧水“薬用 雪肌精”のリニューアルだ。1985年の発売以来、初の刷新となったが、多数のベストコスメを受賞し、ファンを増やしている。新たな“薬用 雪肌精”は、日本、ひいてはアジアでニーズの高い「美白」に加え、乾燥や赤みなど「透明感」が損なわれる原因にアプローチ。潜在的なニーズをも汲み取った納得感のあるリニューアルは開発に携わる人たちのプライドがにじみ出ている。メガヒット商品の“薬用 雪肌精”を超えるための新たな開発へ原資を投入できることに加えて、プライドを感じるモノ作りにすごみを覚えたのだった。
リニューアルについて自分ごと化して考えると、「ウカ」は誕生から約15年を迎えるが、始まりのアイテム“ネイルオイル”が順調に販売数を重ね、おかげさまで累計販売数が200万本を超える。90年代初頭から女性の社会進出も相まってジェルネイルを爪にまとい、そんな指先を見つめることで自分自身を高めることがブームになった。しかし、ジェルネイルは少なからず爪への負担がかかるため、ネイルオイルでのケアが不可欠だった。使い慣れていない人も多いネイルオイルを使い続けられるように、ネイリストが顧客の声に耳を傾けて生まれたのが“ネイルオイル”だった。ロールオンタイプで手軽に使えて、持ち運びにも便利なサイズ感や、香りまで楽しんでもらえることが支持されている。そんな“ネイルオイル”は発売から今まで、一度もリニューアルをしてこなかったが、現在代表の渡邉季穂を中心にリニューアルに向けたプロジェクトを進めている。
コスメやアパレルは消費者のインサイトをつかむことができれば定番商品となる一方で、マーケティングの手法を変えて違う切り口で参入できるであろうというスタンスで商品を出すと、命が短いものになってしまう。モノ作りに携わる上で、必要とされているものを作ること、ゼロからイチを生み出す姿勢は欠かせない。さらに革新を怠らないリニューアルへのスタンスは、ブランドを国内だけでなく世界に打ち出していく上で大切にしたいと。
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