近年、米国を中心としたファッションおよび小売業界でIP(知的財産)ビジネスが台頭している。経営破綻した企業が保有するブランドや百貨店の資産を、のれんやECを含む知的財産と店舗などの有形資産に切り分け、知的財産のみを買収。ライセンスビジネスとしてブランドを包括的に運用し、利益を上げる手法だ。そうしたブランド管理会社の代表格は、「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」「フォーエバー21(FOREVER 21)」、米「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」などを保有し、経営不振に陥ったアパレルブランドの買い手候補として名前が挙がることも多い、オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)だろう。ここでは、IPビジネスをけん引するABG、WHPグローバル(WHP GLOBAL)、マーキー・ブランズ(MARQUEE BRANDS)のトップ3社についてまとめた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月2日号からの抜粋です)
オーセンティック・ブランズ・グループ
設立:2010年
創業者:ジェイミー・ソルター(Jamie Salter)会長兼最高経営責任者(CEO)
2023年の売上高(小売りベース):290億ドル(約4兆1760億円)超
保有ブランド数:50以上
主な保有ブランド:「バーニーズ ニューヨーク」「フォーエバー21」「ブルックス ブラザーズ」「リーボック(REEBOK)」「テッドベーカー(TED BAKER)」「クイックシルバー(QUIKSILVER)」「ビラボン(BILLABONG)」「ハンター(HUNTER)」「チャンピオン(CHAMPION)」など
ブランド開発および運営管理、マーケティング、エンターテインメント事業などを担うABGは、ファッション関連だけでなく、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)やマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)などセレブリティーの知的財産も保有している。こうした50以上のブランドを、約1600社のライセンスパートナーと提携して世界150カ国以上で展開する、この分野のリーディングカンパニーだ。ニューヨークを本拠地に北米や中国にオフィスを構えており、2023年には日本法人を設立している。
同社は、商業施設などを運営する不動産投資信託会社サイモン・プロパティー・グループ(SIMON PROPERTY GROUP以下、サイモン)と半々の出資比率で設立した合弁会社スパーク・グループ(SPARC GROUP以下、スパーク)を擁しており、小売り要素の強いアパレルブランドはスパークが買収していることも多い。18年に獲得した「エアロポステール(AEROPOSTALE)」や「ノーティカ(NAUTICA)」、20年に傘下に収めたブルックス ブラザーズがその例だ。ソルター会長兼CEOは、「ブランドを運営会社から切り離して獲得すれば、間接費が必要なくなる。店舗を維持する場合はその運営を不動産会社などのパートナー企業に任せ、私たちはライセンス販売やブランドのマーケティングに専念することで、互いに利益を上げることができる」と説明する。
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