ファッション

森永邦彦が語る「アンリアレイジ」とは切っても切り離せない“藤子・F・不二雄” “ドラえもん”という存在

森永邦彦デザイナーの「アンリアレイジ(ANREALAGE)」は、“22世紀の「すこし・ふしぎ」な日常服”をテーマにした特別なコレクションのポップアップストアを9月4〜10日、高島屋新宿店と大阪店で実施する。コレクションの一部は日本橋店、横浜店、京都店、玉川店でも販売する。

森永デザイナーが多大な影響を受けた“ドラえもん”の生みの親であるまんが家 藤子・F・不二雄氏にオマージュを捧げて制作し、2024-25年秋冬のパリコレクションでは一部をお披露目した。肝入りの作品たちに込めた思いを森永デザイナーに聞いた。

WWD:自身と藤子・F・不二雄氏のつながりについて。

森永邦彦「アンリアレイジ」デザイナー(以下、森永):「アンリアレイジ」を立ち上げた20年前、ちょうど読んでいた藤子・F・不二雄先生の“異色短編集”という作品集に大きな影響を受けた。ありきたりな光景や風景の中に、すこしの非日常が見え隠れするような世界感。日常が壊れてしまうような、ダークな一面もそこにはのぞいた。

読んでいて、雷を打たれたような気分だった。藤子・F・不二雄先生の考えるSFとは「サイエンス・フィクション」ではなく、「すこし・ふしぎ」なもの。つまり、日常の延長にあるほんの少しの非日常が、驚きとワクワクを与えてくれる。その考えは、「アンリアレイジ」の「日常と非日常をつなぐ服」というコンセプトに大きなヒントを与えてくれた。

WWD:今回のコレクション制作の経緯は?

森永:僕から藤子・F・不二雄プロへ持ち掛けた。僕がやりたかったのは、単なる(IPビジネスとしての)キャラクターコラボではなく、藤子・F・不二雄先生の考えを服としてコレクションに落とし込むこと。

WWD:というと?

森永:「ドラえもん」の作品中に、22世紀にタイムマシンで行くエピソードがある。そこでは人間ではない生物が服を着て暮らしている。僕らには、ファッションは「人間の体ありき」だというステレオタイプがある。ただこの話のように100年後、もちろんそこに人間がいるとは思いたいが、たとえばロボットに着せるならどんな服を作るだろう?。そんな想像をしながらコレクションを制作した。

ひみつ道具は空想ではなく
未来を想像する刺激をくれる

WWD:2024年秋冬パリコレではドラえもんカラーのボールシャツが登場した。前ボタンを閉めると名前のように球体にふくらむ。普通のシャツは、人間の体に合わせて構築的で直線的な形をしているが、そんな常識が揺さぶられるようだ。

森永:「ドラえもん」に登場する“ひみつ道具”も、僕らの想像力を刺激してくれる。服の発想に転換すれば、いくらでもユニークな作品が作れるんじゃないかと思えてくる。たとえばこのTシャツ(1万9800円)は、“影”をその場に留めておけるひみつ道具「影ぶんちん」を再現したもの。僕らが開発した、紫外線に当たると色が変わる「フォトクロミック」という素材を使っている。太陽光に当てると“ドラえもん”と“のび太”の影がだんだん濃く伸びていき、室内に入ると5分もすれば消えていく。

また、反射した光が光源にまっすぐ返る特性のある「再帰性反射素材」を採用したシャツ(3万5200円)は、スマホなどのライトを当てるとドラえもんカラーの水玉と鈴が浮かび上がる。(ひみつ道具の)“きせかえカメラ”のような面白さを味わってもらいたい。

個人的にお気に入りなのは、“スモールライト”の発想に生かしたTシャツ(1万9800円)。シャツの胸部分に一回り小さなシャツをワッペンのように付けてみた。この服を作りながら、「スモールライトで今まで自分が作った服を小さくして、つなぎ合わせてパッチワークにしたら、また新しい服ができるんじゃないか」と想像した。そうやって服作りをすれば、無駄も出ずに持続可能な産業になるんじゃないか、とか……。

WWD:ひみつ道具は“空想”ではなく、ワクワクするような未来を想像するタネになる。

森永:そう思う。最後に、「ドラえもん」にまつわる話をもう一つ(笑)。「ドラえもんがなぜ青いのか」というと、諸説はあるものの、ネズミに耳をかじられてショックで青ざめたから、と言う説が有力だ。今回のコレクションで企画したファーコート(30万8000円)は、前述の「フォトクロミック」という素材を使っていて、室内だと黄色だが屋外では真っ青に変わる。

デジタルやアニメーションで色がパッと変わるのは当たり前。だが、実際に自分が着ているものの色や柄が変わったらどうだろう?そんな少しの非日常が与えてくれる気持ちの高鳴りやワクワクは、日常が戻ってきた今だからこそ必要だ。コロナ禍が明けて、未来を前向きに考えられるようになった。そんなタイミングでこのコレクションを世に送り出せることをうれしく思う。

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