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大丸松坂屋が第1回MBSサミット開催 メタバース事業で先陣を切る理由とは?

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大丸松坂屋百貨店は8月23日、第1回メタバース ビジネス ソサエティー(以下、MBS)サミットをギンザシックス13階で開催した。

同社は2020年に「バーチャルマーケット」に出展し始め、23年からオリジナルアバターを制作・販売している。「メタバースに参入した際に、いろいろ知りたかったけれど、なかなかさまざまな知見を得られるような機会がなかった」と岡崎路易(るい)DX推進部部長メタバース事業責任者。メタバースについて知識を深め、ビジネス活用の可能性を探求する場として、24年5月にMBSを始動。今回、初めてサミットを開催した(参加費4000円)。会場にはメタバース事業に乗り出しているテレビ局や商社、メーカー、メディアなど60人程度が集まった。

VRアーティストのせきぐちあいみがオープニングアクトを行い、VR空間に大丸松坂屋のモチーフである孔雀とカトレアが“枠にとらわれていない”様子をライブで描いた。2016年からメタバース界隈で働いてきた経験を紹介しながら、いろんな国からアート制作や指導の依頼を受けることや、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う人とのコラボなどこれまでの仕事を振り返った。「VRは長い目で見て、人類にとって素晴らしいもの」と語った。

パネルディスカッションは全部で5つ。最初の「日本におけるメタバース市場」では、メタバース専門ウェブメディア「パノラ(PANORA)」を運営するパノラプロの広田稔社長と、大丸松坂屋のオリジナル3Dアバター等を制作するVの藤原光汰CEO、大丸松坂屋の岡崎部長が登壇して、“現実の拡張”ではなく、“現実とは違うもう1つの世界”で楽しむ日本的メタバースへの期待と、VRChatやゼペット、クラスターといったプラットフォームでの大丸松坂屋の取り組みを紹介した。

これからメタバース事業に取り組もうという人に対して、Vの藤原CEOは「メタバースの中で何をしたいのか。コミュニティーの中に入ってみることが大事」と語り、パノラプロの廣田社長は「自分で入ってみて、その空気を感じてみることが重要」とアドバイス。メタバース事業に取り組むにあたり、自らVRChatの文化や技術を学ぶ「私立VRC学園」で2週間講義を受け、コミュニティーに入った岡崎部長は「一次情報が大事。自分でやってみることが大事。それぞれのプラットフォームで活動してみると分かる。コミュニケーションなので、結局は人だ」と語った。

大丸松坂屋は商用利用をするためにVRChatと公式パートナーシップを締結している。「(VRChatは)まだまだ世界2000万ユーザーくらいで、日本はその十数%と聞いている。でも、非常に熱量が高いし、すごく応援してくれる。熱量の高いファンとつながることができるのが黎明期のメタバースの1つの特徴だと思う」(岡崎部長)。

PRなのか?事業なのか?
マネタイズは難しい

2つめのパネルディスカッションでは、宇宙事業に取り組む日揮グローバルと、横須賀市の観光課、ケンウッドの担当者が登壇し、それぞれのメタバース活用事例を共有した。参加者の多くが聞きたいであろう「マネタイズ」についても、実態を明かした。

“半島にあり、目的がないと来ない街”横須賀市は、観光課として昨年VRChatにオリジナルワールド「メタバースヨコスカ」を立ち上げた。加えて20体ものアバターに対応する3Dスカジャンを配布。ワールドには11万アクセス、スカジャンは4万DLを突破した。市内の三笠公園に展示されている世界三大記念艦「三笠」をベースに巨大ロボットデザイナーの草分けとして知られる宮武一貴がデザインした「みかさロボ」を猿島ワールド内に登場させるなど、注目度も高い。

「ITリテラシーのあるクリエイティブな人たちに横須賀を知ってもらうというところに主軸を置いていてスタートした」と小山田絵里子・文化スポーツ観光部観光課主任。「『スカジャンは好評で販売してもよかったかも?』という意見もあったが、この事業に関しては『コンテンツ等に使ってください』というふるさと納税や企業版ふるさと納税が元手になっており、市の税金を使わずに成り立っている。中高生対象のブレンダーやユニティの講座などの教育プログラムの実施も行うが、VRはさまざまに使える。ツールの1つとして、認知症予防や教育など、他部署での活用も広げていきたい」と語った。

JVCケンウッドは、6月にVRChatに専用ワールドを設けて、有料のバーチャルライブ「マジカルジュークボックス」を開催した。広瀬香美やおめがシスターズらが参加し、歌やパフォーマンスを披露。「ステージや会場演出を瞬時に変えられるのはバーチャルならでは」と真島太一DXビジネス開発部新規事業推進担当部長。「VRはユーザーがお金をかけずに楽しめるのが特徴で、『エモさ』が若いユーザーの心をつかむのに重要だ。一方で、企業にとっては事業なのか、PRなのか、目的を明確にして何をやるのかが大事。これから数年間、いろいろな企業がさまざまなチャレンジをすることでマネタイズできるようになると考えている。魔法が使えるといった、普段できないことができるのがVRの魅力だが、“魔法合戦”=高費用になりかねない。コンテンツ作りは日本が強い分野でもあり、オールジャパンでできる領域だと思う」。

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