ビューティ
連載 ベスコス歴代名鑑 第7回

「コスメデコルテ」“リポソーム”は大谷売れで大ヒット 百貨店スキンケア首位の秘密


2009年から続く「WWDBEAUTY」のベストコスメ特集では、バイヤーのアンケートをもとに本当に売れた商品を表彰する。連載「ベスコス歴代名鑑」では、15年以上続く本特集の中でも常にランキングに入賞する“傑作”をピックアップ。時代を超えて愛される理由や商品の魅力について、美容ジャーナリストの加藤智一が深掘りする。今回は「コスメデコルテ(DECORTE)」のロングセラー美容液“リポソーム アドバンスト リペアセラム”にフォーカス。

「コスメデコルテ」といえばリポソーム、と言われるほど、ブランドの代名詞となった“モイスチュア リポソーム”。1992年に誕生して、29年にわたりロングセラーを続けてきた美容液だが、2021年にエイジングケアを訴求した“リポソーム アドバンスト リペアセラム”としてアップグレード。さらなる肌効果に加え、23年にロサンゼルス・ドジャース所属のメジャーリーガー、大谷翔平選手を広告に起用したことで、スキンケアに関心が低かった男性が店頭に足を運ぶという“大谷売れ”旋風も巻き起こした。

リポソームとの出合いはうっかり間違いから

そんな「コスメデコルテ」とリポソームの出合いは、うっかり間違いから生まれた出来事というから驚きだ。今からさかのぼること約40年前。当時の化粧品研究員が細胞内小器官のひとつである“リボソーム”に関する講演会に行こうと思い、会場に向かったところ、そこで行われていた講演内容は、ボとポの1文字違いの“リポソーム”。講演タイトルを見間違えたことで、内容がまったく異なる研究発表だったものの、リポソームは成分のデリバリー技術として医療でも採用されていたことから、「これを化粧品に入れたら面白そう」と興味がわき、1984年に社内でリポソームの研究がはじまったという。

ただ、リポソームはたまねぎ状に幾重にも重なる層で構成された0.1~0.2ミクロンの球状からなる主に医療分野で研究されていた技術であったこともあり、当時の研究解析技術では化粧品への配合安定性を証明するのには難があった。そのため、その存在を証明し製剤化するために8年を費やし、92年に晴れて業界初のリポソームを名乗ることのできる化粧品を世に送り出すことに至った。

美容好きマダムの間で口コミが広がる

発売当初はリポソームという技術があまりにも斬新だったため、店頭販売での反応は薄いものだった。しかし、美容好きが集まる化粧品専門店のマダムからは、その効果感が高い評価を受けたことで、“マダム売れ”を醸成。加えて、2000年代からはベストコスメを獲得し始めたことで、人から人へと口コミが広がり、それがロングセラーの礎となった。いまでは親子3代で愛用しているファミリーも多いという。

そんな長く愛されていた美容液を“リポソーム アドバンスト リペアセラム”として21年にリニューアルしたが、そのきっかけのひとつは大型放射光施設「SPring-8」での実験結果だった。「SPring-8」は太陽の100億倍もの明るさに達する放射光を使うことで、物質を原子・分子レベルで構造や機能を調べることができる世界最大規模の施設だ。この施設の研究技術を利用したところ、リポソームが肌上でラメラ構造そのものを形成することを確認。これにより、肌が本来もつバリア機能を補強する効果があることがわかり、これまで訴求していた保湿ケアの上をいく、エイジングケアをかなえることが可能になったのである。

この新たなエイジングケア効果と冒頭で述べた“大谷売れ”の相乗効果で、発売3年で売り上げは300万個を達成。それと同時に、国内百貨店のスキンケアの売り上げ個数としても1位を獲得*。ブランド史上最大のヒットを記録している。

マダムから娘へ、そして男性へと愛用者の輪を広げているリポソーム美容液は、今後、ブランドの多様性を語るうえでも強みになるだろう。

ー注釈ー
※Beaute Research調べ 2024年4月「日本 2024年第1四半期版レポート(Copyright ©2024 Beauté Research SAS)」における百貨店プレステージスキンケア市場の2021年10月〜24年3月 売上金額ベース

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