ケリングは、イタリア版「ヴォーグ」と協業し、幅広くインターンシップを募って将来の業界人を育成するプログラム「エンパワー・タレント」をスタートした。このインターンシッププログラムは、デザインのみならず、マーチャンダイズ、ヴィジュアル・ディスプレー、デジタル、コミュニケーションのプロ育成を目指すもの。インターンは、昨年の段階で17ヵ国出身の180人が働くケリング本社などで経験を積むことになる。
「WWD-NY」の独占インタビューの中で、フランソワ・アンリ・ピノー=ケリング会長兼最高経営責任者(CEO)は、「課題は、クリエイションを担当するデザイナーの育成だけではない。ブランドビジネスは、たった一人のクリエイティブ・ディレクターが行なうものではなく、専門的な知識と経験を積んだ人々がともに手掛けるものだ。業界は、あらゆるジャンルで才能を欲している」と意気込みを語った。
ピノー会長は、自らも「戦争」と呼ぶ、才能ある数少ないデザイナーをブランド間もしくはグループ間で奪い合う現状を打破しなければと考えている。もちろん、「常にスカウトすべき有能なデザイナーは探し続けている」。同様にCEOやマーチャンダイザー、コミュニケーション・ディレクターに至るまでの人材リストを多数抱えているが、「門戸は若手にも開かれるべきだ」。実際、ケリングの中核を担う「グッチ」のミラノ本社に今年入社した1/3は、インターンを経た新卒もしくはそれに準じる人材という。家電量販店の「フナック」売却に代表されるラグジュアリー・ビジネスへの特化や、傘下のブランドのeコマースを一括してユークスと手掛けるなどの戦略で、組織体系が簡素化した今は、業界への知識と経験が少ない若手でもケリングを理解できる絶好のタイミングと考えている。「小売り戦略のみならず組織も大幅に改編し、複雑なコングロマリットからシンプルな構造の会社となった」。だからこそ、今が若手を積極登用する最良のタイミングと考えているようだ。
ケリングはイタリア版「ヴォーグ」とのタッグのほか、アメリカではパーソンズ・スクール、ロンドンではロイヤル・カレッジ・オブ・アート、北京では清大学と世界各国でインターンシッププログラムに取り組んでいる。同社はこのほか、男女に平等の雇用機会や昇進のチャンスを与える活動にも積極的。現在は、女性幹部の登用に注力している。
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