企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は時価総額が一時2兆円を超えたアシックスの強さを、決算書から読み解く。(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月9日号からの抜粋です)
今回は「アシックス(ASICS)」の決算書を読み解いてみます。卸中心の同社の決算書を読み込んでみて、とても面白かったです。
同社の連結売上高と営業利益の推移をグラフにしました。2015年をピークに下降し始めた時期があり、その後、回復の兆しが見えてきた時にコロナが直撃。コロナからの回復は他社同様に、直近は2期連続で最高売上高・最高益を達成。24年12月期も3年連続更新が予測されています。
アシックス連結 売上高・営業利益・営業利益率の推移
それでは、しばらく低迷が続いた16年以降から、快進撃の直近まで、どんなことがあったのかを掘り下げていきましょう。
アシックスの業績を分析する上での切り口は、地域別とカテゴリー別です。まず、地域別を見て改めて思ったのは、アシックスはすごくグローバルな企業だということです。
アシックス連結2023年12月期
同社の決算補足説明資料に地域別売り上げ構成比や地域別の損益が開示されていますが、23年12月期の売り上げ、営業利益ともに1位が欧州で、日本、北米と続き、4番手の中華圏が利益ベースでは日本を上回り、2番目に稼ぐ地域に育っています。
21年12月期までの売り上げ1位は日本でした。この2年間、日本以外の地域を伸ばし、グローバル企業として各地で稼げるようにしているのが見て取れます。
15年以降の苦戦の一番の要因は北米の苦戦でした。当時、アスレジャーマーケットの新しい流れに乗り切れなかったのが原因です。その間、同社を支えたのが、中華圏、東南・南アジア圏、オセアニア圏。競争が激化する欧米に比べ、「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」をはじめ、ブランド価値の高いポジションが取れたようです。これらの地域では、高い利益率を維持できています。その後、各地域で得意の「(パフォーマンス)ランニングシューズ」のシェアを高めています。
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