PROFILE: (左)前田哲平/コワードローブ社長 (右)長田富男/ZOZO DX推進部生産管理ブロック
ZOZOは服のお直しサービス「キヤスク」を運営するコワードローブと共同で、生産支援プラットフォーム「メイドバイゾゾ(Made by ZOZO)」を通じて、ファッションブランドが「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」上でインクルーシブウエアを受注販売できるサービス「キヤスク with ZOZO」を開始した。ファッションブランドが在庫リスクなく多サイズ展開できて、デザインの応用範囲の広い「メイドバイゾゾ」は、インクルーシブウエアにピッタリの仕組みだ。発想の転換が呼び込む可能性を、自らも車椅子を乗り回して取材するファッションジャーナリストの徳永啓太が、同プロジェクトの担当者であるZOZOのDX推進部の長田富男氏と前田哲平コワードローブ社長に直撃した。(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月9日号からの抜粋です)
生産支援プラットフォーム「メイドバイゾゾ」
「メイドバイゾゾ」は、ファッションブランドの在庫リスクゼロを目指す生産支援プラットフォーム。ZOZOが商品の企画・設計から素材と資材の調達、生産、物流までを一気通貫で行う。「キヤスク with ZOZO」の場合、最短14日発送での受注生産が可能
「キヤスク」とのコラボのきっかけ
――このプロジェクトをスタートしたきっかけは?
長田富男ZOZO DX推進部(以下、長田):心身に重度障がいのある娘がいる。毎日娘に服を着せていると、既製品だと着せにくいし、そもそも体に合うものがない。「インクルーシブウエア」は継続的にビジネスとして展開している事例も少ない。そもそも「障がい」といっても症状はそれぞれ。一人一人に合ったものを、普通に工業生産するとコストがかさみ、1着の価格がかなり高くなってしまう。そうした中で知ったのが、コワードローブの「キヤスク」だった。
――あらためて「キヤスク」とは?
前田哲平コワードローブ社長(以下、前田):「キヤスク」は2022年3月に始めた障がいや病気のある当事者、そして介助する人にとって服を「着やすく」するためのお直しサービスだ。私自身は家族や身の回りに障がいを持つ人はいないが、前職のユニクロ(UNIQLO)時代に、そうした人たちが「おしゃれな服を着たいけど諦めている」ということを聞いた。もっと理解したいと思い、仕事の合間に当事者に会いに行ったり、団体のところへ足を運んだ。対面とオンラインで話をさせてもらったのは300人ほど、ネットのアンケートを合わせると800人以上に調査した。障がいを持つ人に「着やすくオシャレなものを」という思いから起業をしたものの、悩みは一人一人違うのに対して、多様なバリエーションに合わせて作って販売することは現実的には厳しい。試行錯誤を重ねた結果、当事者とお直しできる人をつなげ、既製服をお直ししたものを提供するサービスに行き着いた。
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