「アンリアレイジ オム(ANREALAGE HOMME)」が2度目のランウエイショーを開催した。今回も、2000年代を牽引したスタイリストのTEPPEIが所有する洋服に着想を得て、「アンリアレイジ」が未来的な素材使いと既成概念を超越したパターンなどで未来を志向するのなら、「アンリアレイジ オム」はノスタルジックなムードと「なんでもアリ」な原宿であり当時の時代感を漂わせて過去を振り返る。2つのブランドではじめて過去と未来を見据えるコンセプチュアルな思考は、森永邦彦デザイナーらしいのかもしれない。
「2つで1つ」。そう考えると、正直子どもっぽいシルエットやスタイル、過剰な装飾にも合点がいくのかもしれない。コンセプチュアルでプロダクトデザイナーとしての性格も強い森永デザイナーの「アンリアレイジ」は、時にデザインシンキング的な発想が強く、ほとばしるような情熱を隠しがちだ。本人さえ物静かで、穏やかな語り口からは情熱や衝動、熱量のようなものを感じづらい。しかし彼は、そんなモノを持っていない、もしくは価値を認めず追求しようとしないのではなく、むしろ「アンリアレイジ オム」で爆発させるているのではないか?そして「アンリアレイジ オム」で全てを吐き出すことによって、「アンリアレイジ」に必要なデザインシンキング的な思考に冷静に対峙しているのではないか?ブレない、むしろ前回以上に純粋な情熱を濃密に凝縮しているような「アンリアレイジ オム」のクリエイションを見て、そんな気がしてきた。
すると、派手な色使いや、生地をたっぷり使うことで王子や王様のようなシルエットを追求した自己主張の強い独創的なパターン、なんでも掛け合わせるスタイリング、そして、飽きることなく加え続けた過剰な装飾まで、全てが少し愛おしく思えてくる。ツノの生えたブーツや、安っぽいビーズをあしらったニットのシャツは、もはや学生の卒業制作や小学生の工作のようだが、それもまた情熱や衝動、熱量の結果なのだろう。
物静かな森永デザイナーの立ち居振る舞いや、コンセプチュアルな「アンリアレイジ」のクリエイションに慣れていると、「過剰」というボーダーラインを超えてなお手を加えることをやめない「アンリアレイジ オム」のクリエイションは意外に思える。しかし、彼もまた洋服を心から愛し、ファッションの人生を捧げることを決めたデザイナーの一人なのだろう。正直、パターンから装飾に至るまで、リアリティや洗練を求めるのなら、足りないところは多い。ただ彼は、「アンリアレイジ オム」では冷静より衝動を選んだのではないだろうか?そう考えると、「アンリアレイジ オム」にも共感できるようになるし、だからこそ「アンリアレイジ」への期待も高まる。