ピオトレック・パンスクがクリエイティブ・ディレクターを務める「エリア(AREA)」はブランド創立10周年目の節目となるコレクションをニューヨーク現地時間の9月6日に行った。本コレクションは2024-25年秋冬のオンシーズンのランウェイショーとして発表された。
毎シーズン、同ブランドからの風変わりなインビテーションは参加者に謎解きのような高揚感を与えるが、今回は掃除で使用する黄色いゴム手袋が送られてきた。この中に何かヒントでも隠されているのだろうか。
10周年を祝したシーズンはマッチングアプリの「Tinder」がスポンサーとなり、クリエイティビティやアイデンティティ、自己表現について探求。エリアが得意とする独創的なデザインに加え、クチュール的な手仕事の繊細さが融合した。
肩パッドやラペルを誇張したジャケットは自己表現や自立の象徴であり、時には使い古されたレザーのライダーズやビスチェに落とし込まれた。大きなバックルのワイドベルトでウエストマークをしたスタイリングからも力強さを感じさせる。フリンジを束ねたドレスやブーツ、ゴールドのパネルを組み合わせたボディスーツやショーツ、無数のスタッズが針のように装飾されたレザージャケットやドレスは異彩あるデザインだが、同時にクチュールさながらの精巧な手法が採用されている。
インビテーションとリンクするかのように、手がプリントされたシリーズも登場。コレクションの中でも人気のデニムのドレスやパンツにも手のプリントが施され、エンボスやペイントなど、さまざまなニュアンスで手のモチーフが続く。客席には「BANS OFF OUR BODIES」の文字が書かれたマグネットが置かれていたが、今回Tinderとエリアが生殖健康と権利に対するコミットメントの一貫として「BANS OFF OUR BODIES」とプリントされたTシャツを作成。この言葉は中絶を含め生殖に関する抗議キャンペーンのスローガンとして使用されているが、コレクションの中でも女性の腹部を守るような形をした真っ赤な手のプリントが施されたTシャツも見られた。
コレクションノートの中では「ファッションは個性を表現するキャンバスとして祝います(一部抜粋)」と記されているが、ニューヨークでコレクションを発表するデザイナーの中でも常に独創的なクリエーションで人々に驚きを与えてきたピオトレック・パンスクの自己表現が詰まったコレクションを代弁するかのような一文だ。