「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」は2025年春夏コレクションをニューヨークで9月8日(現地時間)発表した。
同ブランドは今年3月の24-25年秋冬パリ・コレクションでランウエイにカムバックした。ニューヨークでのショーは初めて。アート&イメージディレクターを務めるイブラヒム・カマラ(Ibrahim Kamara)と創業者の故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)は、共にアフリカ出身だ。「私たちアフリカ人の集合的な想像の中ではアメリカ、特にニューヨークという街は、ユートピアの夢が現実となる地だ」とカマラは語る。
来場者へのデジタルインビテーションには“DUTY FREE”(免税)と記されていた。免税の対象者は訪米人。つまり今回のショーにおいて、自身が“アフリカ人”としてのルーツを携えてニューヨークで作品を発表する意思を示したものだろう。
アフリカらしい繊細な手仕事が光る
開幕から連発したのは、近年の「オフ-ホワイト」が得意とするボディーコンシャスで縦のラインを強調したウィメンズルック。主役は、トラックジャケットやボディースーツ風のセットアップだ。ただ今季の「オフ-ホワイト」は、単なるストリートウエアの提案にとどまらない。細やかなメタルパーツを施したバンドゥ、スパンコールでアメリカの星条旗を思わせるモチーフをあしらったメッシュスカート、ハンドペインティングや動物の牙を模した装飾で彩ったユニフォームやスタジアムジャンパー、デニム。ユーティリティー&スポーティーウエアに、アフリカを感じさせる繊細な手仕事を融合させた。
21年にヴァージルが他界してブランドの求心力が低下する中で、アート&イメージディレクターに就いたカマラは新しい「オフ-ホワイト」像を模索する。会場にブルックリンの船着場であるブリッジパークを選んだことも、ブランドの再出発への意志を感じさせた。
ただ来場者の多くは「オフ-ホワイト」元来のエッジィーなスタイルに未だ傾倒しているように見える。ヴァージルの魔法から醒めないファンたちに、今回のコレクションで示した細やかな手仕事の魅力はまだ伝わりきらないかもしれないが、アフリカンスピリットを宿した新たな船出に期待したい。