三越伊勢丹ホールディングスの大西洋・社長が11月10日、明治大学商学部主催のファッションビジネス特別講義に登壇した。明治大学は昨年、創立130周年を迎えたが、学生からのニーズも高いとして、ファッションビジネスコースなどの開設を検討しているところ。昨年の国際シンポジウム開催に続き、第2弾として今回、特別講義を行なった。商学部の特任教授を務める斎藤和弘・弊紙アドバイザーが進行役を務めた。
大西社長が話したテーマは、「マーケティングと戦略人事」。まずは少子高齢化や震災後の生活者のマインドや行動の変化などの経済環境や、百貨店の置かれた現状などを解説。百貨店が本質的に変革していくことの大切さを訴えた。メーカーとの取り組みの中で、価格決定権や商品選定権が持ちにくい中にあっても、什器決定権や店舗装飾決定権など、百貨店としてコントロール力を高める必要性を唱えた。また、マーチャンダイジングや、マーケティングの重要性や、三越伊勢丹としてのプライスポイントの考え方、産地や工場などとデザイナーと組んで開発したオリジナル商品の成功事例なども披露した。
さらに、戦略人事として、「これからの時代に必要なのは、創造力と変革力。個人的能力、対人的能力、意思決定能力、業務遂行能力、志望度などで評価をするが、当社でも平均的な人が多くなっていて、ほとんどの人がジェネラリストだ。新しい事業をやろうとすると、人材がいないことに気づく。これからはひとつのことに長けているスペシャリストがほしい」と語った。
加えて、仕事をするうえでは権限委譲のことをやり、他責ではなくすべて自分ごと、自責で、競合に勝たなければならないと指摘。仕事の仕方や意識の改革として、
☆前年踏襲→あるべき姿ベースへ
☆守り。管理力→攻め・営業力
☆過去の実績重視→新しいモノ・コトへのチャレンジ
☆将来・検討1〜3年後→結論・決済。今すぐ決める。スピード感
にシフトしていると説明した。
最後に、「若いみなさんに期待している。これからは、新しい価値を提案できる人材が重要になる。そのためには、アンテナ、情報の量と質がものすごく大切になる。そのためには、いろいろな人と知り合いになるべきだ。自分だけでは能力の限界がある。質の高い情報を集めきって、自分なりに結論を出していくことが大切だ。そして、人間力が必要だ。厳しい時代だからこそ、チャレンジし、新しいことした人が突き抜けていく。セールの後ろ倒しについて、新聞などで『三越伊勢丹孤立』などと書かれたが、今は百貨店や流通小売業が一つでくくれる時代ではない。孤立した企業で突き抜けていきたい」と叱咤激励した。