ビューティ

ユーチューバー・かじえり 「エナモル」で年商2億円超えでも“まだ三分咲き”

PROFILE: かじえり(KAJIERI)/発信型メイクアップアーティスト(美容インフルエンサー)

かじえり(KAJIERI)/発信型メイクアップアーティスト(美容インフルエンサー)
PROFILE: 1992年10月12日生まれ、大阪府出身。10代のころに趣味でやっていた「真似メイク」でブログがヒット。現在は発信型メイクアップアーティストとしてYouTubeを中心に”元から美人風”のナチュラルメイクを提案しており、SNSの総フォロワー数は60万人を突破。20〜40代まで幅広い層から支持を得ている。その傍ら、2019年にDcyuaを設立し、20年に「エナモル」初の商品であるメイクブラシセットを発売。22年1月に第一子を出産し、同年3月にはブランドのアイコニックアイテム“ニュアンスカラーアイズ”を発売した。ユーチューバー・経営者・母親の3足のわらじを履く実業家である。 PHOTOS:YURINA JINNAI

2020年ごろに急増したインフルエンサーコスメは、選別淘汰が進んでいる。生き残れるのは、マーケティング力と商品力、熱烈なファン層を抱えているブランドだ。発信型メイクアップアーティストのかじえり(KAJIERI)が立ち上げたDcyua(ディキュア)は、自身がプロデュースするコスメブランド「エナモル(ENAMOL)」の人気により、設立(19年10月)から約5年で年商2億円に達するなど着実に成長を遂げている。その裏側には、努力と苦悩を乗り越えた経験があった。

登録者数28万人のYouTubeアカウントを手放す

「正直、あのときが一番精神的につらかった」と思い返すのは、2019年。4年間定期更新し続けたYouTubeチャンネル「KAJIERI MAKEUP」の登録者数が28万人になり、あとひと息で30万人に達成するというところで事務所との間でトラブルが起きた。事態が複雑なこともあり、泣く泣く自身のチャンネルを手放すと、フォロワーと広告収入がゼロになってしまった。

同年、新しくYouTubeチャンネル「KAJIERI CHANNEL」を開設。多くのファンがついてきてくれたこともあり、現在の登録者数は41万人超え。「なんとか乗り越えることができたけれど、自分の大切なものは全て自分で守らなければいけないと学んだ」と苦笑いをしながら答えた。

「私ってYouTubeに雇われているんだ」
「エナモル」をプロデュースするきっかけ

「コロナ禍の2019〜20年、緊急事態宣言でメイクする機会が減ったため、何を発信しても再生回数が回らず、YouTubeの収益が大きく落ち込んだ。この手詰まりしていた時期に、私ってYouTubeに雇われているんだと実感。動画以外にもうひとつ何か自分の強み、軸を見つけなければならないと思い、本格的に『エナモル』を始動した」。

「エナモル」は、メイク初心者でもプロのような仕上がりがかなう色味、テクスチャー、実用性を考え抜いたメイクアップアイテムを販売している。主力アイテムは、アイシャドウパレット“ニュアンスカラーアイズ”(全4種、各2420円)で、ニュアンスカラーの4色をレイヤードすることで、目元に自然な輝きと奥行きを演出する。ほかにも、ベースメイクアイテムやハイライター、メイクブラシなどを用意する。

一般的に知られているインフルエンサーコスメは、化粧品メーカーが本人にオファーし、コスメをプロデュースしてもらうというパターンが多いだろう。だが、かじえりは自身で会社を立ち上げ、自らコスメの販売からイベントの運営、PRまでをプロデュースしている。インフルエンサーコスメの中でもまれな存在だろう。

もともと「エナモル」は、熊野筆などのメイクブラシを製造するタウハウスのブランドだったが、メイクブラシをコラボレーションして作ったことがきっかけで、かじえりがプロデュースすることになった。「『エナモル』は最初タウハウスが所持しており、私のブランドではなかった。一緒にメイクブラシを作ったりしている中で、『エナモル』の全てが好きになり、コスメも作ってみたい、ファンの皆さんに届けたいという思いが生まれてきた。この思いをタウハウスに直接話したところ、『かじえりさんあっての『エナモル』だから、どうぞ』とブランドを無条件で引き渡してくれた」。

そこから「エナモル」のメイクアイテムはかじえりが、メイクブラシはタウハウスが権利を所持。現在も両者の良好な関係は継続している。

スタッフ10人中6人がママ 働きやすい職場環境を目指す

経営や商品企画について知識ゼロのかじえりは独学し、現在は2歳の子どもを育てながら、会社の経営やコスメの企画開発、YouTubeの運用を行っている。また、在庫や発注書の管理、バイヤーへの商談などの細かな業務も自身で行い、「エナモル」の全体像を把握する。

会社も軌道に乗り、スタッフはかじえり1人から10人まで増えた。採用募集はインスタグラムなどのSNSを中心に行い、面接も1次から最終までかじえりが対応するという徹底ぶり。小林菜穂PR担当は「ともに働く私たちもかじえりさんのファン。だからこそ、ファンの皆さんがどんなコスメを、動画コンテンツを求めているかが分かる。イベント会場に貼ってある大きなポスターにサインをもらって持って帰ったこともあったな(笑)」と話す。

職場は、女性が働きやすい環境を提供。産休育休を受けられず苦悩した経験もあり、女性実業家として「もっと時間をコントロールしながら働けるスタイルが広がってほしい。まずは自分の会社をそんな働き方ができる会社にしていきたい」と考える。実際スタッフの10人中6人がママであり、ワークライフバランスを重要視している。

初のポップアップは2日間で売り上げ300万円

直近では、2024年6月に初のポップアップを開催。「2日間で売り上げ300万円と計画費を大きく上回った。アイシャドウとメイクブラシ、ベースメイクアイテム3品などの複数買いが多く見られ、平均の客単価は約9500円。ブランドのポテンシャルを知れる良い機会になった」とコメント。大盛況に終わったという。

「会社としては、まだ三分咲き。現在は“美容インフルエンサーかじえりのブランド”という印象が大きいと思うが、『エナモル』から『かじえり』を知ってもらえるようなブランドを目指している。そこまで辿り着くには、やはり実績と知名度をあげていかなければいけないため、私が前に出ているが、最終的には後ろに下がってブランドだけで回るようにしたいと考えている。まずはそこが現時点での目指すゴールだ」とかじえり。実店舗出店なども視野に入れ、ブランドの売り上げ拡大を目指す。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。