ファッション

「アメリ」黒石奈央子によるビジネスウエア「シス」が9月17日発売 青山商事の起爆剤となるか

青山商事のスーツ量販業態「スーツスクエア(SUIT SQUARE)」のウィメンズブランド「シス(CIS.)」が9月17日にECで先行発売し、20日に「スーツスクエア」など15店舗での販売を開始する。「シス」は「アメリ(AMERI)」の黒石奈央子ディレクターを起用した新ウィメンズブランドで、「アメリ」の顧客と同じ20〜30代女性に新たなアプローチを開拓する。昨年5月に「ザ・スーツカンパニー」から屋号変更し、リブランディングを図る「スーツスクエア」の目玉企画の一つだ。

コンセプトは「rules for fashion, enjoy with rules」。ビジネスウエア初挑戦の黒石が打ち出すのは、「仕事着でもルールの中でファッションを楽しむこと」だ。「これまで着る機会が少なかったビジネスウエアは、どこか“堅苦しい”というイメージが強かった。だけど、人生において仕事をする時間がすごく長い中で、ファッションも楽しみたいし仕事も頑張りたいという女性が多くいると思った。ビジネスウエアという形式的なルールに捉われず、しかしあえてそのルールに沿って、自分らしい個性やファッションを自由に楽しめるオフィスウエアを提案したい。スーツを着たことのなかった私だからこそ、その概念を覆すほどの服が作れるのではないかと思い、協業を引き受けた」。

「生地開発などは私にとっても新境地」

デビューコレクションはジャケットとジレ、パンツ、スカート、ワンピース、シャツ、カードケース、セットアップなど14点を発表。アイコンとするのは、フロントにブランド名のCとSの曲線でデザインした“カーブカットジャケット”(3万690円)だ。「一見シンプルだが、丸みのあるラインを取り入れることで女性らしさを引き立てるディテールにこだわった」という。また、オンでもオフでも着回しやすい「アメリ」の人気シリーズ“MANY WAY(メニーウェイ)”のアイデアを採用し、タンクトップをドッキングしたシャツ(1万5290円)やロングジレとショートブルゾンがセットになったレイヤードジャケット(3万9490円)、ベアトップとタックパンツのセットアップ(3万2890円)など、1点で何通りも、シーンや好みに合ったスタイルを楽しめるというビジネスウエアに留まらない提案にこだわった。

一部を除くジャケットやワンピースなどはマシーンウオッシャブルというイージーケアも特徴としている。「『アメリ』ではなかなか実現できなかった機能性の部分では、青山商事のクオリティーの高い生地開発はとても勉強になった。今回の協業は自分自身にとっても新境地になっている」と黒石は話す。

ローンチ発表日にSNSフォロワー1万人増

青山商事の河野克彦・執行役員TSC事業本部長は、黒石抜擢の狙いを2つ挙げた。1つは、在宅勤務が増えたコロナ明けのオフィス通勤が戻り、ビジネスウエアに対するニーズが変化してきたこと。もう1つは、SNS流入を期待したOMO(オンラインとオフラインの融合)の推進だ。「従来のスーツとしての役割だけでなく、洋服と同じ独自性のあるデザインや毎年着たくなるサステナブルな付加価値に着目した。またわれわれが得意とする着回しや機能性の要素を掛け合わせることで、新たなニーズを獲得できると考える。また、29万人のフォロワーを持つ黒石さんが強みとするSNSを活用したプロモーションなどを積極的に取り入れ、ウィメンズのEC売り上げは前年同期比で1.5倍を目指す」。

「シス」のインスタグラムアカウントはブランドローンチ発表会の日に開設したが、その1日で1万人のフォロワーを集めたという。「黒石さんを起用することで、既存ブランドにはない企画力や斬新なアイデア、新たな販売手法を用いたビジネスモデルを構想した。それは、クロージングを得意としてきたわれわれに弱かった“カジュアル”の部分で、トレンドと実用性を加えられると考えた。さらに彼女の知名度とデジタル施策の相乗効果により、大きく期待したい」と意気込む。

さらにこれを機に国内では西日本での販路を拡大し、21日からは中国での越境ECの取り組みを開始する。アリババ・グループ(ALIBABA GROUP)の自社ECサイト「タオバオ(TAOBAO)」と中国版インスタグラム「RED」(レッド、中国語で小紅書)でのライブコマースを計画。商品を直接アプローチすることで、海外での市場拡大も狙う勢いだ。

2ブランドを業態刷新の起爆剤に

ウィメンズだけでなく、メンズでも2月に新ブランドを発売している。ビームス(BEAMS)の元バイヤー、高田朋佳氏をディレクターに据えた「グービ(GOOVI)」だ。デビュー時は、青山商事の主力ブランド「ザ・スーツ カンパニー」の2倍以上の価格帯に注目が集まったが、欧米のドレスカジュアルに詳しい高田氏が日本の素材に着目し、特別な生地やデザイン、自由に着崩してシルエットを作れるボリューム感などをゼロから製作。そのこだわりが30〜40代の新規客やインバウンド客の購入につながり、8月までのカジュアルカテゴリーにおける売上高は同1.3倍を記録した。初となる秋冬シーズンは日本庭園をイメージした上品なベージュやライトグレーをベースに、樹々のグリーンや紅葉のオレンジなどを差し込む。コートは、尾州産のウール生地を使ったピーコートを用意する。「目標通りに推移しており、2シーズン目も手応えを感じている。『シス』と『グービ』を起爆剤にリブランディングの柱としていきたい」と河野事業本部長。

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