靴下製造・販売のタビオは、新コンセプトショップ「クツシタヤ クローゼット」を東京・代官山に8月1日オープンした。同じ場所にあった「靴下屋」代官山店を刷新したもの。東急東横線代官山駅から徒歩約2分。代官山 蔦屋書店や「メゾンドリーファー」といった話題店が集まる一角にある。ナチュラルな白壁のこじんまりとした店の入り口にはデジタルサイネージを設置。店に入ると、ジーンズをコーディネートしたディスプレイが目に飛び込んでくる。壁面の棚には靴下が整然と並び、洋服や靴も陳列されている。一見すると洋服のセレクトショップのようだ。
「白木の什器を使ったり、デジタルサイネージやiPadレジを導入したりして、カフェやアパレルの店舗のような空間をめざした」。こう話すのは、同社の越智勝寛・社長。代官山界隈が変わりつつある中、3年先を見越した高感度な店にしていきたいという。
内装に合わせて商品構成も変えた。売場面積約15坪に約100品番。「靴下屋」業態の3分の1に絞り込んだ。取り扱う商品はスニーカーに合うカラフルなクルーソックスやパンプスと相性のいいシースルーソックスなど、ヤング女性向けのトレンド商品を中心に、代官山店限定プリントソックスも展開。販売員には、人気個人ブロガー2人を新規採用し、SNSを活用した情報発信にも力を入れる。
同社は現在、「靴下屋」のブランディングに取り組んでいる。新業態開発はその一環だ。今年3月には「靴下屋」阪急西宮ガーデンズ店をリニューアルした。きっかけは昨年、都心の商業施設から退店を言い渡されたことだ。越智社長は振り返る。「メード・イン・ジャパンのモノ作りが評価を得たのはよかったが、店も商品もいつの間にかシニア狙いになり、ファッションビルの若いお客様が離れていった。直営店は最先端でなれけばならないのに、ダサい店になっていた」原因は本部主導の店づくりにあった。同社は製販一体型の独自の生産体制を強みに事業拡大してきたが、トレンドや売り場の声を反映する仕組みにはなっていなかった。その結果、「靴下屋」の既存店(直営)売上高は2011年度をのぞき、2009年度から前年割れが続いた。店舗へのヒアリングでも、シニア向けの店舗と認識している販売員が多いこともわかった。
そこで昨年、本部組織の刷新を行い、店頭を起点とした体制づくりにシフト。未開拓エリアへの出店や顧客ニース?の掘り起こしを強化するほか、店舗イメージの刷新を進めている。例えば、「靴下屋」阪急西宮ガーデンズ店は高感度なファミリー向けの売り場に改装。店頭在庫を改装前の半分に減らし、奥には子供のプレイスペースを設けた。
「店頭の感度を高めることで、事業部全体の感度も上げていく」と越智社長。デジタル化はその一環で、今後は自社通販サイトと店舗環境を整備し、オムニチャネルにも取り組むという。スマホをかざせば母国語で商品説明を見られるICタグ読み取りアプリの導入にも意欲的だ。
今春夏、白の無地ソックスやライン入りソックスが爆発的にヒットしたレッグファッション業界。靴下がファッションアイテムとしてのポジションを確立しつつある中、数年後を先読みした同社の店作りは注目だ。