米百貨店ノードストローム(NORDSTROM)は9月4日、創業者一族のエリック・ノードストローム(Erik Nordstrom)最高経営責任者(CEO)とピーター・ノードストローム(Peter Nordstrom)社長兼チーフ・ブランド・オフィサーからMBO(経営陣による買収)の提案を受けたことを発表した。両氏および一族は、メキシコの百貨店リバプール(LIVERPOOL)などを運営するエル・プエルト・デ・リバプール(EL PUERTO DE LIVERPOOL)と手を組み、ノードストロームの非公開化を目指すという。ここでは、同社の最近の業績や非公開化を決断した背景、またそのメリットとデメリットなどを分析する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月16日号からの抜粋です)
ノードストロームは、1901年にジョン・W・ノードストローム(John W. Nordstrom)がシアトルで開いた靴店を祖業とする大手百貨店。ジョンの引退後は息子らが経営を引き継いで事業を拡大し、71年に米ナスダック(NASDAQ)に、99年にはニューヨーク証券取引所に上場した。現在、同社を率いるエリックとピーターはジョンのひ孫にあたる。
2018年4月にマンハッタンにメンズ館を、19年10月にはマンハッタン旗艦店をオープンし、ニューヨークに本格的に進出。比較的早い段階からECの強化に取り組み、オンラインで注文した商品を店頭で受け取れるシームレスなショッピング体験に力を入れているのが特徴だ。現在、売り上げの36%をECが占めている。
しかし、消費者動向や小売環境の変化、コロナ禍による一時休業、米国のインフレ加速やそれに伴う景気悪化とさまざまな要因によって百貨店業界は長らく苦戦しており、ノードストロームも例外ではない。過去5年の業績を見ると(グラフ参照)、コロナ禍以前の20年1月期決算の売上高は前期比2.2%減の155億2400万ドル(約2兆2199億円)、純利益は同12.0%減の4億9600万ドル(約709億円)。23年1月期に売上高は同水準まで戻ったものの、純利益はコスト高騰、カナダ事業の縮小、サプライチェーンに関する減損費用などの影響により、2億4500万ドル(約350億円)にとどまった。
直近の24年1月期決算は、売上高が前期比5.4%減の146億9300万ドル(約2兆1010億円)、EBIT(利払前・税引前利益)は同46.0%減の2億5100万ドル(約358億円)、純利益は同45.3%減の1億3400万ドル(約191億円)と減収減益。人員整理、値下げやセールを減らした定価販売の推進、デジタル化による在庫管理の改善などの事業再建策を打ち出しているものの、その効果はまだ表れていない状態だ。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。