ファッション

鈴木サザビーリーグ会長、佐藤新潮社社長、隈研吾が語る サザビーリーグ×新潮社の神楽坂「ラカグ」への想い

 サザビーリーグと新潮社が東京・神楽坂で手掛ける新商業施設「ラカグ(la kagu)」プロジェクトの記者会見が8月26日、新潮社別館で行われた。1969年に建てられ、四半世紀以上使われていなかった書籍倉庫跡地をリノベーションして、「サザビーリーグによる"衣食住+知"のキュレーションストア」をテーマに、ファッション、生活雑貨、カフェ、家具、ブックスペース、レクチャースペースを備えた複合商業施設とするもの。週2回のファーマーズマーケットや、作家などを招いたトークショーやワークショップなども積極的に行っていくという(角田光代や吉本ばななのトークショーが決定済)。外観の設計デザインは、神楽坂に12年近く住む隈研吾・隈研吾建築都市設計事務所代表が手掛ける。6年前に代表権を返上した鈴木陸三サザビーリーグ会長が陣頭指揮を執ってプロジェクトを推進していくという。延べ床面積は約960平方メートルで、地上2階建て、開業日は今年10月10日を予定する。

 プロジェクトのメンバーには、隈や、プロデュース&オペレーションを担当するサザビーリーグのほか、アートディレクターに平林奈緒美、キュレーターとして、ウィメンズファッションに安藤桃代、メンズファッションに田中行太、生活雑貨に岡尾美代子(インテリアデザイン・アドバイザーも兼務)、フードに鎌倉で「ロングトラックフーズ」を営む馬詰佳香、書籍はバッハの幅允孝、家具に大井智史、ファーマーズマーケットに長野の小林淳一などを起用。カフェオペレーションにシャルキュトリー・コダマ、コンセプトアドバイザーにローラン・グナシアが加わる。

 鈴木サザビーリーグ会長は、「我々はライフスタイル、衣食住を絡めていろいろな店を出してきた。6年前に代表権返上したが、このプロジェクトのために馳せ参じてきた。ついファッション系は、衣食住といっても表層的、表面的な表現が強い業態だった。新潮社の持つ、伝統や知という内面的な部分に触発をされて、もう少しインターナルな部分を含めた新しい表現をしたいと考えた。隈さんの大ファンであるというの大きなエネルギーになっている。『だましだまし』という言葉が好きなのだが、1回スクラップするとゼロになってしまう歴史を、だましだまし、新しい方向にもっていきたい。今はNY、元はロンドンに住んでいたが、神楽坂には日本人という視点だけでなく、魅力がある。古いものは新たに作れない。コスモポリタン、メルティングポットの神楽坂で仕事ができる。隈さんが開発してくれた、街に溶け込む階段も素晴らしい。こんなオポチュニティー(好機会)はない。街と我々の成長につなげていきたい」と想いを語った。

 佐藤隆信・新潮社社長は、「我々は大家をやるだけで、事業をするわけではない。サザビーリーグさんにぜひ儲けてもらいたい(笑)。ただ、出版社が(こういった事業を手掛けるのは)珍しい。出版界の売り上げが落ちていく中で、倉庫を使って何かできないかと考えてきた。いろんなアイデアがある中で、役員が鈴木会長と話をしたところ、コラボレーションで面白いことができる可能性があるということになった。最終的に、イベントスペースでかなりの部分をイベントさせていただくことになったが、いろいろな情報発信ができれば。今の時代、出版社にとっても、いたずらができる、面白いことを仕掛けるということは、思い出さなければならない肝心なところだ。出版がビジネスになってしまってはダメだ。好奇心と面白い精神から初めて面白いものができる。直にお客様と接することができれば、本来の精神にプラスアルファがあると思う。サザビーリーグと新潮社は衣食住に対して志が高い会社で、哲学が重なっていると思う。キーは神楽坂という場所。共同でできることが可能になると思う」と話す。

 さらに、隈は「私自身、この近くに住んでいる。神楽坂が大好き。いい部分は2つある。一つは歩いて楽しいこと。僕らは専門用語で『ウォーカブル』というが、歩けるし、歩きたくなる街が、世界中でどんどん人気が上がっている。モータリゼーションが進む中で、環境面でも注目されている。東京は歩いて楽しい街が少ない中で、神楽坂は群を抜いて歩いて楽しい場所だ。道が微妙に傾斜がついている。迷路になっているのもいい。二番目は、歴史が堆積し、積み重なっていることが素晴らしい。関東大震災でも第二次世界大戦でもあまり被害を受けなかった。二つの幸運が重なり、昔のいいところが残っている。若い人もよく分かっているが、スクラップ&ビルドではなく、古いものをうまく手をつけながら、それほどお金をかけずに、歴史を、記憶を継承することが自然発生的にできている。今回のプロジェクトでは、二つを生かす。スレートの鉄骨の倉庫で、すごくかっこいい。鉄骨ゴシックと呼んでいい。細いきれいなカーブがある。その倉庫を鈴木会長がうまい形で、商業空間にリノベーションされると思うので楽しみだ。もう一つは大階段だ。神楽坂と大久保中央通の交差点から、建物の2階に、まるで人口の丘のような空間になっている。神楽坂のスロープ、勾配の最後の到達点が丘だ。そこから交差点を見るとすごく面白い見え方がする。一番の到達点に丘ができて、神楽坂が完結したな、という感じがしている。これが新潮社とサザビーリーグのコラボとしてこんな形でできて、住民としても大変ハッピーだなと思っている」。

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