ファッション
特集 NY・ロンドンコレクション2025年春夏

大胆露出からトゲトゲまで創造性爆発 2025年春夏ロンドンダイジェスト

2025年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイークが現地時間の9月13日に開幕しました。今シーズンは、ロンドンコレクション初参加の木村がリポートします。初日と2日目は、若手ブランドの発表が続きました。ロンドンのファッションシーンを盛り上げる若手たちから受け取るメッセージの強さに、終始興奮状態。そんなロンドン取材のハイライトをお届けします。

ロンドン・ファッション・ウイークは40周年

ロンドンに降り立つのは人生初。知らない土地に来てまずやるべきことは、友達作り。というわけで、英国ファッション協会(以下、BFC)が主催するネットワーキング朝食会へ。

ロンドン・ファッション・ウイークは今年で40周年を迎えました。会場には40年間のロンドンのファッション・シーンを振り返る年表が、レジェンドデザイナーたちの言葉と一緒に掲示されていました。「リスクを取らなきゃ新しい世界は生まれない」(フセイン・チャラヤン)、「デザイナーは社会の拡声器」(サミュエル・ロス)、「どんなに大変な時代に生きようとも、みんなクリエイティブになれる」(ジョナサン・アンダーソン)など、時代を築いたアイコンたちの、ファッションのパワーを信じる言葉に感化されました。そして肝心のネットワーキングは、やっぱりそんな簡単じゃないですね……他人に話しかけるのって勇気がいりますから(笑)。名刺交換できたのは3人。BFCのキャロライン・ラッシュ(Caroline Rush)CEOにあいさつできたので合格とします。

若手「ディ・ペッツァ」でショーはじめ

BFCには、若手ブランド支援プログラム「ニュージェン(NEW GEN)」があります。選出されたデザイナーは、資金やPRの援助、コーチングなど、最大で3年間ビジネスの基盤を築くためのサポートが受けられます。「ニュージェン」プロジェクトに今シーズン選ばれたブランドの1つ「ディ・ペッツァ(DI PETSA)」のショーで、コレクション取材スタートです。

ギリシャ出身のディミトラ・ペッツァ(Dimitra Petsa)が2019年に立ち上げた同ブランド。水に濡れたような“ウエットルック“がシグネチャーで、女性性をフェミニズム的視点で表現するデザイナーです。モデルのジジ・ハディッド(Gigi Hadid)やラッパーのニッキー・ミナージュ(NICKI MINAJ)がマタニティーフォトの際に着用するなど、セレブのファンも多いそう。

ショーは、片方の胸が露出するコルセットを着用したモデルが、眩しそうに顔に手をかざしながら登場。ギリシャ神話をなぞった構成で、神秘的なムードが漂います。ギャザーが体をつたい、水のような線を描くシャーリングドレスを随所に差し込みながら、男女共に肌を大胆に露出したルックが続きます。ディミトラにとって服は体を覆うためのものではなく、体を美しく見せるためのアクセサリーと捉えているのでしょう。「ニュージェン」選出デザイナーは、私の服の概念を早速飛び越えてきます。

後半にかけては、パンツのクロッチ部分に配した三角のポケットに手を入れ、自分の体をなでながら歩くモデルが現れ、自己に向けたエロティシズムのムードが加わります。今季のテーマは、「私の体はラビリンス(迷宮)」。自分と向き合い、迷い、知ろうとする――セルフラブのメッセージを込めたショーでした。

「自分の仕事を誇りに思いたい」と語るアクセブランド「アンクタサルカ」

次は同じく「ニュージェン」に選ばれたアクセサリーブランド「アンクタサルカ(ANCUTA SARCA)」のプレゼンテーションへ。「アンクタサルカ」は、デッドストックのシューズなどを素材に使った循環型のアプローチを取るブランドです。ルーマニア出身のデザイナーアンクタ・サルカは環境意識の高い両親の下で育ち、サステナビリティは自身のパーソナリティーに根付いてある価値観だと話します。「できる限り、新しい資源を消費しないモノ作りがしたい。だって自分の仕事を誇りに思いたいもの」とアンクタ。

今シーズンのテーマは「Day-to-day Life」。日々の暮らしに目を向ける大切さを投げかけるため、彼女が選んだのは日常靴として多くの人に親しまれている「クラークス オリジナルズ(CLARKS ORIGINALS)」と「クロックス(CROCS)」。2社の協力を得て素材を集め、メンズシューズの「クラークス」はハイヒールにし、「クロックス」はサボ風にするなど、それぞれの素材を解体して、異なる文脈に落とし込んで新たな命を吹き込みます。

会場のモデルたちは、アームレストに寄りかかりながらゆっくり動く演出で、「ところで何でアームレストなの?」と聞くと、「骨折した時に強制的に休まざるを得ない状況になるでしょう。あれをイメージしたの」とアンクタ。結構強引でした。日本ではヌビアン(NUBIAN)などで取り扱いがあるそうです。

現代版の英国女性戦士にあさぎーにょ大興奮

中国出身デザイナーの「ユハン ワン(YUHAN WANG)」は、とっても愛らしい女性戦士たちを見せてくれました。会場はイギリス兵士の戦争の歴史を展示する軍事遺産センターです。壁には、兵士が戦う様子の絵画が飾られています。そんな空間に登場したのは、レースやリボン、立体的な花といったモチーフをふんだんに使った“バレエコア“スタイルに、大きなボクシンググローブやヘッドギアを装着したモデルたち。ボクシンググローブやヘッドギアまでもレースで覆われていてとってもキュート。今みんなが夢中の“バレエコア“やスポーツ要素をミックスする“ブロケットコア“を、パワフルにアップデートしてくれました。

会場にはファッションインフルエンサーのあさぎーにょさんが来場していました。ショー中、私の前に座ったあさぎーにょさんからはあふれんばかりの笑顔が絶えません。スタート前に、「今日の衣装のポイントは?」という質問に答えていただいていましたが、ショー終了後には「やっぱりこの興奮を語りたいんですけど、撮り直してもらっていいですか?」と自ら声をかけてくださり、ショーの感想を語ってくれました。その動画がこちら。

スパイキートップスの「チェット ロー」、ファン拡大の予感

トゲトゲのニットトップが人気の「チェットロー(CHET LO)」も「ニュージェン」に今シーズン選出されました。渡英前にショーのチケットをメールでリクエストすると、すごく前のめりで返信をくれたのが彼です。そして絶対忙しいであろうショーの1週間前に、わざわざオンラインで取材をさせてくれました。彼のフレンドリーな姿勢に好感度アップです。そんな彼の人柄もあってか、すでに「チェット ロー」コミュニティーが確立されている印象。同ブランドのスパイキートップをかわいく着こなす来場者を多く見かけました。

今回のコレクションは、チェットの母親に捧げるショーだと話します。もともと彼がファッション愛に目覚めたのは、母親のワードローブにある服を借りて遊ぶ時間が好きだっだから。そんな母親との関係性を振り返りながら、敬意を表現したコレクションだそう。

スパイキートップはアイコニックである一方で、飽きさせない表現が難しいのではと想像していましたが、その表現のバリエーションの広さに驚きました。ブラウンやグレーといった落ち着いた色味で、コレクションはぐっと大人っぽい印象になりました。「チェット ロー」コミュニティーはますます拡大しそうな予感がします。


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