「ケイタマルヤマ(KEITA MARUYAMA)」は1994年に誕生し、今年で30周年。丸山敬太デザイナーは動植物で飾ったテキスタイルや、和洋中の要素を融合したデザインで、“晴れの日に着る洋服”を作ってきた。しかし多幸感溢れる表現の陰では、幾度の困難も克服してきた。酸いも甘いも知りながら、それでもなお「楽しいことを生み出したい」とする彼の人生譚とは。
文化服装学院卒業後、僕は「ケンゾー(KENZO)」の面接を受けるためにパリにいた。そして挫折を味わっていた。「君には独自の才能がある。一度日本に帰って、どんな会社でもいいから一生懸命働いてみなさい。機会があれば、またその時に」。担当者から、実質の不合格を言い渡されたわけだ。落ち込んだものの、僕はその言葉を素直に受け止め、ビギグループで「アツキオオニシ」のアシスタントになった。
大西厚樹さんから多くを学ぶ中で、特に驚いたのは細部までこだわるショー演出だった。モノトーンの水玉の衣装をまとったモデルが登場する場面のために、アシスタントらで小物の全てを黒白に塗り分けたこともある。「こんな些細なことまでするんだ」と、物事をトータルでデザインする重要さを思い知った。
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