ニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYコレ)が9月6〜11日にかけて開催された。今回は「コーチ(COACH)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「トリー バーチ(TORY BURCH)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」といった重鎮の面々に加え、久々の凱旋ショーを行った「アライア(ALAIA)」やストリートの雄「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」が参戦するなどトピックスも満載だった。ここでは取材のこぼれ話(ときには関係ないハナシ)をニューヨーク初滞在の記者が振り返り形式でお届けする。
今春夏のファッション・ウイークでは、ニューヨーク発クワイエット・ラグジュアリーの代名詞「ザ・ロウ(THE ROW)」の影響が他のNYブランドにも確実に波及していることを感じさせた。特に印象に残ったのが、「ケイト(KHAITE)」「トーテム(TOTEME)」の2ブランド。モノトーンを基調に抑制の利いた美しさを提案する中で、「黒」の使い方のうまさが目を引いた。
黒は通年使える定番色ではあるものの、特に春夏はコーディネートの仕方によっては重たさが気になってしまうこともある。その点、彼らが使う黒は、白よりも軽やかでセンシュアルにすら見えてくる。計算された肌見せやレイヤード、差し色の工夫などは、日本のリアルクローズブランドにも大いに参考になる部分がありそうだ。
CFDAアワード2年連続受賞「ケイト」
トップス巻きやシアー素材の妙
オーバーサイズのアウターやトップス&ボトムスに多用するシアー素材、サテンライクなツヤっとした素材で黒の重苦しいムードを排除している。黒のトップスを首元に巻いたルックは、この巻き方をぜひキャサリンに教えてもらいたいところだ。使っているアイテムはシンプルだが、着方の一工夫で印象がガラッと変わることを教えてくれる。
マンネリ感皆無のモノトーン
抜け感の妙が光る「トーテム」
エリン・クリングとカール・リンドマンによる「トーテム(TOTEME)」はストックホルムで2014年に設立されて以来、ニューヨーク・ファッション・ウイークの常連ブランドになっている。今季のテーマは「白と黒のスペクトル(波長)の追求」。モノクロのカラーコードに絞っているが、繊細な刺しゅうや丈の長短、ときに視覚を通じて肌触りが伝わってくるような大胆なテクスチャーで抑揚をつけ、マンネリ感を感じさせない。シトリンのアクセントやメタルパーツもいい仕事をしている。
腕を抜いて着るニットが、コーディネートにいい抜け感をもたらしている。背中やお腹の肌見せよりもさりげなく、大人っぽシックに見せることができる。クロコ柄のレザージャケットは、ヘルシーなタンクトップ合わせでトゥーマッチ感を軽減。足元のサンダルも抜け感を出すポイントだ。手に持ったレモンイエローのバッグ、ゴールドのネックレスがいい仕事をして、カジュアルになりすぎない大人のオールブラック&タンクトップスタイルも参考になる。カットオフディテールのジャケットを使ったコーデは、それ単体でもいい塩梅のカジュアル感を演出していて、中に着ている丸首のシアートップスの大きめの襟ぐりもエフォートレスなムードを醸している。
「コス」の秋冬ルックは晩夏提案の参考に
H&Mグループ傘下の「コス(COS)」はリアルクローズブランドらしく2024年秋冬コレクションを発表。晩夏あたりから活躍しそうなニットやファーを使った黒の提案があった。
通年使える定番色ではありながら、使い方を間違えればコーデが重たくなってしまい、ただのフォーマルにもなりかねないブラックコーデ。日本の春夏のリアルクローズ市場では、一部の好感度セレクトショップなどを除いて、まだまだ売り手も買い手も黒を使いこなしきれていない印象がある。ニューヨークブランドならではのシック&センシュアルな着こなしを、春夏ならではのブラックコーデ提案のヒントにしてみてほしい。