ファッション
連載 ロサンゼルスで活躍するクリエイターの秘密 第3回

ピース綾部の現在地 渡米5年を機にLAへ移住 「エンタメの地で挑戦することをやめない」

PROFILE: 綾部祐二/芸人

綾部祐二/芸人
PROFILE: (あやべ・ゆうじ)1977年12月13日生まれ。2000年にデビューし、03年に又吉直樹とお笑いコンビ、ピースを結成。15年に「WWDJAPAN」のノージェンダー特集の表紙を飾る。16年にお笑いの活動を休止し翌年ニューヨークへ、22年にロサンゼルスへ移住。著書にアメリカでの生活をつづったエッセイ集「HI, HOW ARE YOU?」。現在YouTube チャンネル「YUJI AYABE from AMERICA」を運営する

レッドカーペットやハリウッド、映画や音楽、ファッションの煌びやかな世界と大自然が共存する大都市ロサンゼルス。世界のエンターテイメントの発信地であるこの地へ、日本からさまざまなクリエイターが移住している。ロサンゼルスに移住して3年、スタイリスト歴23年の水嶋和恵が、ロサンゼルスで活躍する日本人クリエイターに成功の秘訣をインタビュー。多様な生き方を知り、人生やビジネスのヒントを探る。第3回は芸人の綾部祐二が登場。渡米までの人生から現在の居住地ロサンゼルスでのライフスタイルまでを聞く。

レッドカーペットを歩く日を夢見て渡米

水嶋和恵(以下、水嶋):米国へ移住したきっかけは?

綾部祐二(以下、綾部):ハリウッドのレッドカーペットを歩くという夢のためです。ニューヨークに5 年住み、直感的にハリウッドがあるロサンゼルスの地を見てみたいと思い、2022年にロサンゼルスへ移住しました。逆に言えば、ハリウッドがなければロサンゼルスを選んでいなかったと思います。

世界中に、その土地土地のエンタメは存在しますよね。でも、グローバルなエンタメを展開する唯一の地がアメリカだと思うんです。世界中誰もが知る俳優や歌手、テレビ番組や映画が存在し、僕にとってエンタメの“the Highest Mountain(山の頂上)”が、ここハリウッドです。住む場所を選ぶのなら、究極のエンタメ都市であるニューヨークかロサンゼルスの二択でした。ニューヨークに住み、東京の素晴らしさを再認識しましたし、ニューヨークからロサンゼルスに移ったことでニューヨークの良さをさらに感じています。

水嶋:私はロサンゼルスの自然の壮大さに引かれていますが、綾部さんはいかがですか?

綾部:ロサンゼルスが好きな人は、豊かな自然や気候を理由にあげることが多いと思いますが、僕の移住理由は刺激やインスピレーションを受けるためです。都市が好きなんです。東京の恵比寿、原宿、表参道、渋谷のカルチャーも好きですね。あとは、京都にも引かれます。ディズニーランドも外せません!僕にとっては、アーバンカルチャーが主としてあってこそ、自然の存在の素晴らしさを感じることができるんです。

また、ハーレーに乗るので、東京やニューヨークより、カリフォルニアの方が適していました。ニューメキシコ州、コロラド州、ユタ州、アリゾナ州、さまざまな場所をハーレーで駆け巡ります。ロサンゼルスの壮大なエンタメと自然の融合は、東京では感じられないです。都会がありながら、山、森、海へも行くことができるロサンゼルスは、今の僕にとって丁度良い場所です。心地が良いです。

「芸人さん」に憧れた幼少期、工場勤務から上京

綾部:自分の中でのターニングポイントは2つ。芸人を目指し茨城から上京した時と、日本から米国へ移住した時です。まず、小学3〜4年生の時に幼馴染と描いていた夢が「芸人さん」でした。中学、高校と進級するにつれ、幼い頃に思い描いていた夢は、遠いものになっていきましたが、今思えば、お笑いというものを常にテレビ番組を通して追いかけて観ていましたね。

茨城での工場勤務時代は、給料のほとんどをアパレルに散財するほどファッションが好きだったので、東京に上京しショップ店員になろうと思っていました。ある時、いつものように幼馴染と東京に行き買い物をしていると、テレビ番組「ダウンタウンのごっつええ感じ」のロケに遭遇したんです。「まっちゃん!いつも見ているよ!」と、偶然にも松本さんに声をかけることができました。そして撮影中にダウンタウンさんへ向けられた凄まじい歓声に衝撃を受け、まるで時が止まったようでした。

その夜茨城へ帰り、幼馴染と行きつけの居酒屋で「今俺たちは20歳。10年後の自分たは、子どもが2人ぐらい居て少し太って、ここの居酒屋で『もしかしたら俺らも芸人になっていたかもな』なんて話しているかもね」と。俺たちの夢は芸人になることだったはず。やってダメならまだしも、たられば話をするなんてクソダサい、その時そう思いました。

この出来事がきっかけとなり、上京して吉本の芸人養成所に入り、7年の時を経て松本人志さんと「すべらない話」でテレビ共演も果たしました。そこからブレイクするまでにさらに4年。11年の下積み時代を経て、自分が思い描いていた「芸人さん」になる夢をかなえました。

人気絶頂の最中に米国移住 その真意は

水嶋:コメディアンとしての地位はもちろん、9本のレギュラー番組を持ち、テレビのMCなど多岐に渡って活躍していた最中、なぜ拠点を米国に移したのですか?

綾部:16年には芸人としての仕事を辞め、米国移住への準備を始めました。17年、40歳の時にニューヨークへ。20歳のターニングポイントと同様、10年後の自分を想して「もしかしたら自分はアメリカで活躍していたかもしれない」と思うのは嫌だなと。最初から、無理だ、叶うわけがない、と思いながら夢を追いかける人はいないですよね。自分自身が、絶対にできる、もしくはもしかしたらできる、と信じることが大切だと思うんです。

水嶋:自分の描く夢がきっとかなうと思わせてくれる、素敵な言葉ですね。夢があっても踏み出せない人へ、何かアドバイスはありますか?

綾部:単純に僕は「できなかったことはあるけど、やらなかったことはない」と思って人生を終えたいんです。やって出来なかった後悔より、あの時やっていればの後悔は一生自分につきまとう。やって出来なかったことは経験としてプラスになるけれど、あの時やっていればの気持ちは怨念として残る。

水嶋:私も同じ気持ちです。ロサンゼルスへの強い気持ちがあり、渡米を決断して本当に良かったと思います。米国への移住、そして異国の地で夢をかなえることは、ハードルが高いでしょうか?

綾部:米国に移住するなんて大変!と思われる方もいるかもしれませんが、自分は特にハードルが高いと思ったことはありません。行きたい場所がアメリカだった。それだけです!

水嶋:ロサンゼルスでは、どのような活動をしていますか?

綾部:連載の「ロサンゼルスで活躍するクリエイター」と趣旨は異なるかもしれませんが、夢に向かってもがいているのが仕事ですかね。そう言っても良いですか?(笑)

水嶋:自分の好きなことを、好きな場所でしている、それが既に成功なのではと私は感じます。綾部さんはどのようなライフスタイルを送っていますか?

綾部:ハーレーに乗ってランカスターやマリブへ行ったり、バイク仲間のいる行きつけのショップに行ったりして過ごしています。

水嶋:ローカルの仲間との触れ合いは素敵ですね。綾部さんのSNSで垣間見られますが、他にはどのようなコンテンツを発信していますか?

綾部:僕のYouTube チャンネル「YUJI AYABE from AMERICA」では、自分の好きなタイミングで、自分の好きなものを撮影して発信しています。それを楽しく観てくれる人がいれば十分ですね。インスタグラムは、自分を振り返るフォトアルバムみたいな感覚です。

エンタメの地で挑戦することをやめない

水嶋:米国での暮らしでは英語力が必要不可欠だと感じています。英語力の取得に関して自論はありますか?

綾部:移住して7年。英語力は向上したと感じますが、まだまだお話になりません。学生時代は勉強が好きではなくてサボっていましたが、英語というのはきちんと自分が勉強し努力したゼロからイチに持っていく基礎が大事ですよね。甘えず、勉強しないと。最低限自分の思いや思考を相手に伝えたいですし、相手が伝えようとしていることを知りたい。僕にとって究極の永遠の課題が英語ですね。日本語を操るように英語も操り、ここハリウッドでエンタメの仕事をしていきたいと思います。光と影が共存するからこの世界は魅力的。苦があるから、その先の未来があると思っています。このエンタメの地で挑戦することをやめません。

PHOTOS:TADASHI TAWARAYAMA, TEXT:ERI BEVERLY, LOCATION:Deus Ex Machina

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