2014年以降、安値が続いてきた綿花価格だが、その傾向は今年いっぱい続きそうだ。米国の綿花業界団体のコットン・インコーポレーテッドは、16年7月末までの在庫が2100万tになる見通しを発表した。大手綿花トレーダーの東洋棉花は、「15年度期初(15年8月)の在庫は約2400万tで、1年間の世界の消費量とほぼ同じ。通常は約900万?1100万tなのでこれは異常な水準。ここまで多いと取引が活発化せず、安値安定する可能性が高い」と指摘する。指標になるニューヨーク証券取引所の先物取引では1ポンドあたり64セント前後(約79円)で取引されている。綿花の安値は、大量に綿花を使用するデニム生地メーカーやシャツの価格にも影響を与えそうだ。
安値の原因は、中国政府の政策の影響が大きい。「中国政府は14年3月まで、在庫が積み上がっているにもかかわらず、国内綿花農家の保護のため、綿花を積極的に買い取ってきた」(東洋棉花)という。現在の2400万tの在庫のうち約3分の2が中国にあると見られている。綿花価格は、中国政府の買い取り終了直後の14年7月に急落。同年4月頃には90セントを超えていた綿花価格は、一時は60セントを切るまでに落ち込んだ。中国政府は輸入量を制限し、国内在庫の消化を増やそうとしているものの、過去に高値で買い取っているため、評価損を恐れて、備蓄分の処理を積極的に進められないジレンマを抱えている。
綿花の安値安定は、デニム生地大手のカイハラを筆頭に日本企業にとっては追い風だ。原料を安く調達できるため、価格競争力が高くなる。綿花価格はピーク時の11年3月には、2ドル29セント(約283円)を超え、当時の為替は1ドル=約82円だった。その時期と比較すると、輸出の多いカイハラのような日本企業にとっては、今年の原料安+円安は大きな好材料になる。欧米市場ではデニム市況が上向きつつあることも後押ししそうだ。